- Trinity Blood -1章
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3つ目のボタンを外したレオンの指は。
そこで手を止めた。
服に隠された『秘密』に気が付きながら。
レオンは黙ってボタンを止め直すと、その場を離れた。
彼が自分を信用し、真実を話してくれるまでこれについて触れないでやろうと改めて考え直す。
「さてと…さっさと仕事終わらせるか」
室内に設置された電話のベルが鳴ったのは、その時だった。
「静かにしろよ…[#da=1#]が起きるだろ」と喉の奥で唸りながら電話を取った。
『フロントです…あの、ガルシア様ですか?』
受話器から流れて来たのは、先日脅して資料をふんだくった覚えのあるフロントマンの声だった。
このフロントマン、初日にレオンが[#da=1#]を連れているのを見て『出張と偽ってお楽しみするのはよくあるんですが、ホテルの設置品等には手を付けないで下さい。後片付け大変なんで』と何故か決めつけて言い放ったフロントマンその人だった。
フロントで周囲から一瞬好奇な視線を浴びたレオンが低い声で唸ったのを、[#da=1#]に止められたのは言うまでもない。
その後は[#da=1#]が受付を済ませたので『偽りの出張』ではない事は証明できた様だが、レオンには気分のいいものではなかった。
フロントから離れる時に「必要なもの以外の電話は回すな」と忠告した。
『偽りの出張』であれば[#da=1#]を口説きに掛かったり、自分の所在を確かめて幼い顔立ちの青年へ声を掛ける『隙のない人間』も少なからず居る。
仮に声を掛けられたとしても、金銭の授受をちらつかせたとしても、そんなものに靡く訳はないだろうが。
昨日朝一番に資料を脅し取ってやったのもこのフロントマンだった。
「…必要なもの以外電話を回すなって言わなかったか?」
『ひぃ』っと受話器の向こうから声が聞こえ、受話器を落とす音が聞こえる。
『ぁ…ぁぁあの…っ!アベル・ナイトロード様がお見えなのでご一報差し上げようと…!』
怯え切った声で答えるフロントマンは、確かに「アベル・ナイトロード」と言葉にした。
「アベル?――来てるのか?」
寝室で眠る[#da=1#]をちらりと見やる。
彼の秘密に関係している様な気がして、アベルの登場が気に食わない。
「しゃーねえ…部屋に来る様に言ってくれ」
『わ…分かりました!お伝えします!』
「やっと電話が切れる」と聞こえて来る様な心の声が響いて来る様だ。
「…ったく、お前の行動は分かりやすいんだよ」
受話器を置いて、小さく苛立ちの声を上げた。
普段は嫌いではない同僚も、こういった事で無駄な行動が多い。
こういう事を続けると、本人が望んでいない所でボロが出てしまうだろうが。
盛大な溜息。
レオンはすぐに[#da=1#]の傍へ向かい「ごめんな」と呟いた。
さらりと流れた黒髪を撫でて、毛布を掛けてから寝室を後にした。
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