- Trinity Blood -1章
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古新聞
レオンの疑問は尽きる事はなかった。
これで10歳?
あれで男?
これで巡回神父が務まるのか?
長期任務で一緒になったのは初めてだった。
呼び掛け、そして見回り以外無駄な動きをしないトレスと、時間を見付けては古新聞を読んでいる[#da=1#]に不思議に思っていた。
前髪で瞳を器用に隠したその幼い顔立ちの神父に、この任務はこんな子供でも遂行できる任務なのだろうか。
信じろと言われても、まあにわかに信じ難い。
何度か会話らしい言葉を交わしたが、掠れたその声は不思議とはっきりと耳に届いた。
言葉は短く会話かと聞かれたら頭を縦には振り難い。
ただ、任務内容について詳しく聞いて戻ってきた時にアベルが「レオンさんには気を付けて!いいですね!いつもの様にトレス君の傍に絶対いて下さいね!」と散々畳みかけられていたので第一印象は[#da=1#]にとってあまり良いものではなかった様な印象だった。
そこまで気を付けろという、アベルの心の内を聞く間もなくトレスが車を回して迎えに来たので挨拶もそこそこに車に乗って、列車を乗り継いでここまで来て、今日で4日になる。
アベルの言いつけを守っているのか「いつもの様に」というアベルの言葉通りトレスの傍からあまり離れずに過ごしている幼い顔立ちの神父とは少し距離を保ったままである。
しかし。
4日目にして、二人きりになる場面があった。
トレスが見回りに行くのと丁度入れ違いの形で帰って来たのだ。
「よう、ちょっといいか」
返事も聞かないままで傍に座って話しかける彼の手には、何かの荷物が持たれていた。
微かに髪が揺れ、こちらを向いた気がしたが。
任務開始前にアベルに気を付ける様にと散々言われているところに出くわしたが、やはり警戒されている様な気がする。
目は合わさずに、[#da=1#]はまた新聞に向き直った。
「お前さん、そうやって集めた古新聞ずっと読んでるのか?」
再びレオンに向く…いや、向いた様な気がしているだけかも知れないが。
しかしもう[#da=1#]は新聞に意識が向いていない様だ。
答えに詰まっている様子のこの幼い神父。
何か言いそうで、何も言わない口元。
「これ、仕事のついでに貰って帰って来てやったぞ。この辺の地域の新聞だってよ」
[#da=1#]ではとても持てないであろう量をレオンはにこやかに、軽々しく持って帰って来たのだ。
やはり何か言い掛けるその口元。
「ホントはもっと持って帰りたかったんだけど、これ以上持って帰ったら流石に読めないだろうしお前さんが持って移動するには不便かと思ってな」
もしかしたら言葉が浮かばないだけなのか、それともどういっていいか分からないだけなのか。
口元だけは何かを言っている様な気がする。
しかしやはり、声を発する事はない。
しばしの沈黙。
初日、見た目こそ少し怖い印象だった。
4日を共にして少し印象が変わっている。
大柄で浅黒の、僧衣を纏っていなければおおよそ神父とは思えないその男性とは随分と身長差がある。
隣に立っているのは少し、怖い。
しかし、神父アベルに聞いていた印象とは少し違う感じがしている。
女性に声を掛けて甘い言葉を投げかけたり、サラダが嫌いと妙な所で子供っぽい思考を持っていたり。
まだ一緒にいて4日しか経過していないが、ふと周囲が見逃している様な雰囲気になる事がある。
いつの間にか新聞へ向き直る事なく[#da=1#]はレオンの瞳を覗き込んでいた。
その瞳は金色を宿す。
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