Thriller
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ソファで足を伸ばしてゴロついているとチャンミンの部屋のドアが開く。
俺は携帯を閉じて起き上がった。
先に目が合ったのはチャンミンで、その後ろから覗き込んだなまえとも目が合う。
「あ…」
「…おいで?なまえ」
しっかり目が合ったチャンミンだったが、口を開きかけた俺を無視して彼女にだけ笑顔を見せると、優しく手を引いて玄関に歩き出した。
「あーチャンミナ!ちょっ無視しないで!」
「…付いてこないで下さい。僕結構怒ってますよ?」
「分かってます、えーと…ごめん…悪ふざけ、しすぎました…」
「…彼女送ってきます」
「うん、あ、なまえも、驚かせてごめんね…」
「……」
俺は玄関を見通せる廊下まで、少しの距離だけリビングを離れて二人に近づく。
チャンミンには効かないと分かっていて、人の良い印象を混ぜた悪びれた笑みを作って見せたが、予想通りチャンミンは相手にしてくれない。
なまえは短く頷くだけだ。
けれど来た時と同じように、俺の笑顔で少し愛想が戻ったのが見てとれる。
先を歩くチャンミンの背中と背後に立つ俺を見比べて、少し気を遣いながらチャンミンに手を引かれるなまえ。
チャンミンが玄関を開けて彼女を連れて出る時、俺は彼女だけがこちらを振り向いた瞬間を見計らって口を開いた。
「またね」
手を振る俺に振り返そうかと迷いながら上がる彼女の手。
…これならまだチャンスはありそうだな。
警戒を少なくした彼女の様子に明るい先を想像して、笑みがこぼれかけた。
その時。
ドアが閉まりかけた隙間で、上がりかけた彼女の手をチャンミンが奪ったのが見える。
そのままドアが閉まるにつれ小さくなっていく外の世界で
チャンミンがなまえに接吻けるのを、俺は黙って見送ってしまった。
ガチャン。
音を立てて閉まったドアを見届け、俺はその場にしゃがみこむ。
「な、んだよ…」
閉まるギリギリ、俺を一瞥したチャンミンの流し目。
予想外だ。
チャンミンめ、優しいだけの男でいるつもりかと思ったら
「お前もどSなんじゃん…」
藪をつついて出してしまった蛇に腰を抜かした格好の俺の横を、勝ち誇ったような笑みで帰ってきたチャンミンが通り過ぎていく。
「おかげさまで雨降って地固まりました」
そう、すれ違い様に囁かれた言葉に答えないままの俺を無視してリビングまで入ると、チャンミンはテーブルの上で潰された紙屑を拾う。
ゴミなら捨てますよと言いながら中を見た後
それはそれは不敵に
「もらっておきますね」
と笑った。
「…………」
俺は何も言えずに見送る。
なまえ…
俺程度のスリルで満足してた方が
身の為だったかもしれないよ…。
チャンミンが去った後のリビングで、ソファに寝転んで目を閉じてみるけれど
俺は記憶にすら、チャンミンの不敵な笑み以外思い返すことはできなくなっていた。
END
13/13ページ