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思いのほか餓えていたらしいことを知ったのは、デザートも堪能し、浮かれた足取りで着いたマンションの前だった。
ポケットの中で携帯が震えて、アラームをかけたことを思い出す。
どれだけ早食いだったのか、と自分に驚いた。
今から商店街に戻ろうか。
とりあえず、アラームを止めようとポケットから携帯を出した。
『着信:ユノ』
開いた携帯に表示された名前に、ボタンを押そうとした手が止まる。
既に数回を過ぎていた振動も止まり、画面には『着信あり』のアイコンだけ残った。
「…………」
立ち尽くしたまま、その着信履歴を確かめるより早く、もう一つアイコンが増える。
『メッセージあり』
そのアイコンを開き、携帯を耳にあてた。
『なまえ?遅くなってゴメンな、今から行くだから、駅着いたら連絡するな』
雑音と乱れた息の混じる声。
走りながら電話をかけてきたのだろう。
入ろうとしたマンションを見上げて、自分の目に涙がたまっていたことを知る。
マンションがぐちゃぐちゃにゆがんで、見ていられないと閉じた目から頬に熱がこぼれた。
「……うそぉ…」
昨日会ったばかりの彼とした、たった一回の約束。
ここに会いに来るとくちづけた、彼の約束。
…どうせ叶わない。
朝起きた時、そう結論を下して始めた、清々しく充実した今日は
…本当は全て、彼を忘れるための充実だったと
今、分かった。
叶わない夢を見るのが怖かった。
期待をするのが怖かった。
待ち続ける時間が怖かった。
待ち続けるだろう自分が 一番、怖かった。
部屋に居たって、何をしたって、どこに居たって、ほんとはずっと
ずっと、ユノを待っていたのだから。