Proof
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彼女と歩いた舗道の続きを歩く。
もう目の前に彼女は居ない。
彼女と見上げたビルの隙間を仰ぐ。
もうそこに彼女と見た光は無い。
埋めることのできない、彼女の居ない時間。
けれどそれは残酷に過ぎ去って、僕の目の前に眩しさをもたらす。
夜が終わっていく。
空から光は失われ、青白い明日が僕を迎えにくる。
彼女の言った、「いつか」という言葉。
けれど僕は彼女のように明日を信じることができない。
明日を避けようと目の前に持って来た手のひらを見つめ、何度も握りなおした。
絡めた指
解けた指
それがにじんで、溶けてゆく。
溢れた涙を止められないまま、何度も握りなおす手を見つめる。
「……っ…なまえ…さん……っ」
握りなおすたび、掴めなかった彼女の温もりが朝の冷たい空気に逃げてゆく
求めても求めても掴めない。
それは貴女と僕の間に確かにあるはずなのに。
今は
ただ止まらないこの涙が
手には掴めない涙だけがきっと
僕が貴女の間に求めるものの代わり。
僕が挙げた手にタクシーが止まる。
無神経な朝の光の中、開いたドアへ乗り込む前に僕は、排気音にかき消されそうな声で街に呟きを落とした。
「愛してます」
答える声は無く、涙を手のひらで拭ってタクシーに乗り込む。
行き先を告げた後、乱暴に閉まるドアから目を逸らして
僕は、彼女の居ない街を後にした。
END
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