Proof
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
事務所の関係者が何か賞をとったとかで開かれた祝賀パーティー。
そこで最初に出逢った時は、彼女のいうとおり、失礼なことを言ったと思う。
『結婚されて長いんですか?おいくつですか?』
その時 彼女がしていた薬指の指輪は、すごく鈍い光を放っていて年季が入っていた。
それに比べ彼女自身は新鮮な光を放ってそこに居る。
…本当に、ただ単純に、彼女という存在に抱いた興味が発させた言葉だった。
僕は彼女の返事まで覚えている。
『いくつに見えますか、なんて聞いてしまうような後ろめたい年よ』
清々しい声で、綺麗なハングルを紡ぐ唇。
鈍い光を放つ指輪ごとその手を握り締め、綺麗な言葉ごとその唇を奪いたいと思った。
僕はあの時に、今まで女性に対する衝動などろくに知らなかったと思い知らされた。
僕と彼女の会話など気にも留めず、最初に挨拶をしたきり年寄りばかりで話していた彼女の夫。
彼は見計らったように僕の衝動の時に現れて、愛想よく彼女を連れ去る。
彼女の姿に視線を絡ませて離れがたく見送る僕に、ずっと隣で見ていたユチョンが言った。
『チャンミン…そんなにいいか?人妻』
そんなんじゃないと答えた僕だったが、その視線は言葉と裏腹、なおも彼女の姿に絡まっていた。
興味のあるなしが分かりやすいと自分でも思う。
今だって、他の人相手では考えられないほどの衝動が僕の腕を動かそうと全力でそそのかしにかかっている。
待て、もう少しじゃないか。
ここは部屋じゃない、エレベーターだ。
もうすぐ部屋に着くじゃないか。
今夜とった部屋はそれなりに夜景も綺麗な部屋だ。
彼女が興味を持つかは分からないが、少なくとも彼女に見せたくて選んだのは確かだ。
甘い香りをやり過ごすのに僕は内心、必死になる。
二人だけを乗せて、追いすがる後ろめたさから逃がすように上っていくエレベーター。
誰も知らない小さな箱の中。
けれど部屋に着くまでは彼女は僕のものじゃない。
衝動に耐える僕を見上げ、彼女が不意に口を開いた。
「…思い出せない…。よっぽど忘れたいようなこと言ったのね?」
「……まだ考えてたんだ」
「ちょっと…聞いたくせに話を終わらせてたの?」
ひどい、と彼女は言って、固めに握り込んだ手で僕の胸を軽く叩こうと振り上げた。
あまりにゆったりとした仕草だったので、僕は反射的に受けようとした手で簡単に彼女の手をとってしまう。
ひどいのはどっちだろう。
僕との出逢いなど忘れているくせに、その程度だと僕に思わせているくせに
こうして僕の衝動をその弱々しい手だけでも簡単に突き動かしてしまうんだから。
結局取ってしまった手を引き込みたい衝動に負け、僕は見事に彼女の唇にはまりこんでしまう。
追いすがる後ろめたさをどんどん引き離していく割には、ゆっくりと動くエレベーター。
その蓋が開く頃には、壁に縫い付けた彼女とたくさんの息を交換して、溶け合った甘い香りがどちらのものか分からないほどに抱き合っていた。