Opposite
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「おはよーございまーす」
「おはよー」
「…はよざいます」
早朝の車。
運転席に座る彼女に小さく返事をして、僕はユチョンに続いて後部座席に乗り込んだ。
後の3人は既にマネージャーさんと宿舎を出ていて、僕とユチョンだけ別の現場から直行する事になっていた。
どうしてよりによって今この3人で。
きっと今頃ジェジュンヒョンも心配してるだろう。
ユチョンが浮かれてなまえに話しかけている。
はずんだ話題をそのまま僕にもふってくるけれど、僕はうまく気分を盛り上げられない。
「…ジュンス?大丈夫?」
なまえがバックミラーごしに話しかけてくれた。
大丈夫、と答える声にも顔にも元気がないのが自分でも分かる。
「ジュンスはゲームしすぎだから…」
「またあ?」
「しってないですよーぅ…」
もう、どうして僕はまだ彼女が好きなんだろう。
ユチョンのことだって彼女のことだって好きなら、応援できなきゃ嘘だって思うのに。
どうして僕はこんなに、不満と絶望にまみれてしまうんだ。
「…ちょっと、そこのコンビニ寄っていい?」
「いーっすよ」
「ユチョンは車見ててね。ジュンス、おいで」
なまえがシートベルトを外して手招きする。
僕は言われるまま、車を降りてなまえについていった。
コンビニに入ると独特の音楽と人のざわめきをかき分け、生鮮品のあるコーナーに連れて行かれる。
なまえがヒョイと掴んで、「はいっ」と僕に渡されたのは
「…なっとう…」
「好きでしょ?食べていいよ。車で」
「……なまえ」
「今日3人だけだし、匂いくらい多少我慢できるからさ」
「…………」
「そんな顔してないで、元気出してよ?」
困ったように眉を下げて、なまえが笑う。
あの日以来まともに見られなかったなまえの顔。
メイクさんの施した魔法なんて今日は使ってないと分かるのに、あの日よりもっと綺麗な顔で笑ってる。
そうか
なまえは幸せなんだ。
ユチョンの傍で、幸せだから、こんなに可愛くなったんだ。
僕は、渡されたカップをぎゅう、と握って告げる。
「ありがと、ざいます…」
「どういたしまして。あ、でもお金はジュンス払うんだよ」
「…か、買ってくれたっていいんじゃないんですかあー」
「いや、あたし納豆嫌いだし」
「おいしですよーぅ」
「臭いよ!」
笑いながら僕をレジに押し出すなまえに、僕もやっと笑い返すことができる。
不満も、絶望もなくなってないけど。
僕が大好きななまえの笑顔はここにある。
戻った車でユチョンが納豆だ!とおおげさに笑うのを見て、僕もなまえも声を上げて笑った。
臭い!と文句を言うわりには嬉しそうなユチョンが、そのうち分けてと言い始める。
僕はユチョンが笑顔で開いた口にスプーンを運んで、なかなか切れない糸をグルグル回しながら思った。
なまえと同じ笑顔だ。
そうか。
ユチョンも幸せなんだ。
だったらやっぱり、僕は二人を見送らなきゃ。
このとき。
吹っ切れない気持ちを抱えたままの心に、僕はそっとフタをした。
もう出てこないように。
起きてこないように。
ゆっくり寝ていて、と言い聞かせて。
開け放した窓から吹き抜ける風が、僕の視界で笑う二人の頬を撫でていく。
その優しい感触が僕の頬に触れた時、僕はようやく二人をまっすぐ見て笑えた。