Opposite
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衣装に着替えてスタジオに入ると、知らない男と話すなまえが居た。
ちらちらとマネージャーさんを見ているが、マネージャーさんは他のスタッフと話していて気づいてない。
しかもそのまま、スタッフと一緒に振り返りもせずスタジオを出て行った。
なまえが何度も小さく頭を下げて、「また」と口を動かしているのが見える。
会話を終わらせようとしているのだろうに、そうやって立ち去る動きを見せるたびにその男はなまえとの距離を詰めて話を続けるので、だんだん壁際に追い詰められている。
僕はほぼ脊髄反射で床を蹴って駆け寄った。
「なまえっなにやってんですかあーっ、マネジャさんあっち行きましたよーぅ!」
「わ、ジュンス…ジュンスちょっと、ちょっ…す、すいません!!えっと、ま、また…」
「あ、ああ、…また…」
ポカンと僕を見るその男には視線を返さず、無理やりになまえの腕を掴んで壁際から引っ張り出す。
そのまま彼女を引きずってスタジオの外に出した。
「…え、ごめんチーフ呼んでた?てかチーフさっきそこに…」
「呼んでませんよぅ、マネジャさんさっき出て行きました」
「じゃ、……もしかして、助けてくれた?」
「…………」
僕は頷くだけの事すらできずに、顔を逸らしてしまう。
頷けば後の言葉だって出やすいのに、僕はどうして。
今なら二人で話せるのに。
さっき楽屋に戻ったばかりのユチョンを始め、後のメンバーはまだ誰も出て来ていない。
マネージャーさんも既に見える場所には居ない。
ひどい事を言ったお詫びだって言えば恥ずかしくもないじゃないか。
「…ありがと、実はちょっと困ってたから助かった」
なまえはこうして素直に言ってくれてる。
今、言えばきっと。
「あーあ、話しかけられた時にちょっとカッコイイなーと思ったから、久々に出逢いだーとか思って機嫌よく話しちゃったのがダメだったよねー」
…ああ、なんで今、そんなこと言うんだろう、なまえ…
いつもの冗談を言う顔だ。
気まずくなりそうな僕に気を遣ったんだ。
悪気なんてちっとも無いの分かってる、分かってるけど…
「恋人、そんなに欲しいですか?」
「あ、いやそういうわけじゃ…」
「恋人できないって僕が言ったからですかっ?」
「ちがうって、冗談じゃん、ジュンス声大き…」
「それでそんなカッコして、モテて、嬉しいですかっ!?」
「はっ?ちょ…っ」
「ジュンスぅ?」
なまえが僕につられて声を荒げそうになったところで、ユチョンに呼び止められる。
振り返るとポカン、としたユチョンの顔が見えた。
その視線は僕を通り越して少し下がったところで「あ」という顔になる。
え?
もう一度前を向いた時、僕は胸に強い衝撃を感じた。
「…もー、ほんっとムカつく…」
なまえが 泣いてる。
あまりに深くで起こった胸の衝撃に僕は何も反応できなくて、さっきのユチョンのようにポカン、としてしまう。
「…なまえ、あっち行こ」
目の前で泣くなまえに手も差し伸べない僕を見て、ユチョンが声をかけ近づいた。
大丈夫、と手を振って避けるなまえに、僕をチラ、と見た後「スタジオの前だから」と言い聞かせてユチョンがその手を引きつれていく。
「…ジュンスぅ、衣装変わったから、スタイリストさんが楽屋で呼んでたよ」
振り返って言うユチョンの服は確かに僕とは違う色だ。
そんなことにも気づかないくらい僕は動揺していた。
だから当然気づくわけもなかったんだ。
ユチョンがなまえの手を引く時に、僕に向けた視線の意味なんて。