Opposite
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撮影が終わると、なまえはまた律儀にあの男にも挨拶をしてスタジオを後にした。
ユチョンも、あの女の子に手を振っていた。
マネージャーさんの運転するバンの中、寝ていなければ会話をしているはずの後部座席が静かなのでジェジュンヒョンが一番後ろの座席から覗き込んでくる。
「…ジュンス?なんか…怒ってる?」
「怒ってないです」
怒ってるじゃん、と笑うジェジュンヒョンにも笑い返せない。
ユチョンは僕の気まぐれだと割り切っているらしく、携帯に夢中だ。
誰にメールしてるんだろう。
僕はさっきの女の子しか思い出せない。
…気分が悪い。
あんな男がなまえに近づいていたのを放っておいたばかりか、自分も他の女の子に近づいてるなんて。
ユチョンは確かに女の子に優しい。
それは分かってる。
でもあんなこと、なまえを傍に置くならしちゃいけないはずじゃないか。
…なまえの笑顔が曇ってしまうような、こと。
しちゃ、いけないはずだ。
僕は宿舎の前に止まったバンを、なまえが降りるより早く開けて降りた。
なまえが「ありがとう」と言うので、今日の駐車場での出来事を思い返す。
バンのドアを閉めたユチョンに、同じように言ったなまえのお礼。
ユチョンの耳打ちに真っ赤になっていたなまえ。
あの仲睦まじい様子はなんだったんだ。
ユチョンにとってはどうでもよかったんだろうか。
振り返ってユチョンが降りてくるのを見ても、携帯を見つめたまま、ドアを閉める様子も無くバンを降りて僕となまえの目の前を通り過ぎただけだった。
なまえは全員が降りるのを見送り、ハア、とため息をついてドアを閉める。
マネージャーさんが運転席からなまえを呼んで、何かを注意してからバンを出した。
「なまえ…今日は帰らないんですか?」
「いやいや、帰るに決まってるから」
「でも…マネジャさん車…」
「事務所行って、また帰ってくるって」
宿舎の鍵を出しながら答える、その顔に元気は無い。
そりゃそうだ。仕事だって辛いだろうに、支えになるはずの恋人があれじゃ。
「…………」
僕はなまえの後姿を眺めながら、抱きしめてさらってしまいたいと思う。
寝顔を盗み見て、閉じ込めてしまいたいと思ったあの気持ちより、よほど強く。
宿舎に戻ると、なまえは直行でユチョンの部屋に行った。
すぐにユノヒョンが部屋から出てきたので、人払いをして話しているのだと分かる。
「なまえすごい怒っていたよ」
「ユチョン、なんかやったぁ?」
「…………」
ユノヒョンにもジェジュンヒョンにも答えず、僕は荷物を置きに自室に行く。
勢いよく荷物をおくと大げさな音がして、チャンミンが読んでいた本から顔を上げた。
「…怒っているんですかあ?」
「怒ってないっ」
ふ、とチャンミンが困ったように眉を下げて笑う。
なまえを思い出させるその笑い方を見て、僕は胸に手を当てた。
驚くぐらいに静かな胸の中、ただ、なまえの笑顔だけが大事に大事に抱えられている。
幸せじゃないなら
悲しませるなら
僕は、我慢なんてもうしない。