Opposite
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チャンミンはほんとに記憶力がよくて、僕が衣装に着替えるのをずっと笑って見ていた。
今日は何も間違えてないのに、思い出し笑いだなんていやらしい男だ。
ユチョンはさっさと着替え終わって、もうスタジオに向かったらしい。
なまえも姿が見当たらない。
…またあの場所に居るんだろうか。
思い出の場所だと、幸せそうに笑っているんだろうか。
胸の中では「出して」とでも言うように叩く音がしている。
うるさい、と言えない僕はどうしてしまったんだろう。
「ごめん、みんな着替えて。黒い方の衣装から先撮るって」
「まったああ〜?」
「前も着替えたじゃないんですっかー」
マネージャーさんが入ってきて告げた、以前と同じトラブルに ジェジュンヒョンとチャンミンが不満げに言った。
ユノヒョンがまあまあ、となだめながら着替え始める。
「ユチョンは?」
「さーあ…」
「おーい、どこウロウロしてんだ…」
マネージャーさんが呼びに行こうとするのを、僕は呼び止めた。
「僕っ、着替え終わりますからっ呼んできますよぅ!」
まさかマネージャーさんにあの二人を見つけられるわけにはいかない。
メンバーならともかく、マネージャーさんにバレたりしたら、なまえはきっとクビか異動にされてしまう。
僕は慌てて着替えて、いつかのようにベルトを締めながら楽屋の床を蹴り、駆けた。
スタジオの前を曲がって あの非常階段に向かう。
僕が声をかけたらびっくりするだろうな。
なまえはバレた、と焦るだろうか。
僕は上手く笑えるかな。
秘密にする、と、笑えるだろうか。
とたんに足が重くなって、僕は非常階段の前まで来て立ち尽くす。
胸からドンドンと音がする。
出してとまた叫んでいるんだろう。
なまえ、と叫ぶような胸の鼓動。
この非常階段で二人に出会ったなら、僕はもう落ち込んではいけない。
二人を安心させられるような笑顔で「知ってたよ」と言わなければいけない。
僕は大きく深呼吸した。
胸の鼓動は変わらない。
目を閉じて二人の笑顔を思い浮かべる。
胸の鼓動は瀕死だとは思えないくらいに僕を揺さぶる。
けれど、僕は。
「…走ったせいですよぅ」
そう言い聞かせて、非常階段のドアを押した。