I spill milk again
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「なまえ、ほんとに帰るの?」
「…………」
「機嫌直してよ、ごめんって」
真っ赤な顔のまま、なまえが玄関で靴を履く。
言わないでって言ったのに、と呟いている。
俺が彼女の趣味をみんなにバラしたことが気に食わないらしい。
「ね、機嫌悪いまま帰らないで?」
「……ユチョン、なんか声が甘い。恥ずかしい」
「だって彼女と喋ってるから」
なまえが、う、と言葉を飲む。
真っ赤な顔を治す暇を与えない俺に憤りを詰まらせている顔だ。
暗い玄関でもわかるその頬を「熱そう」と笑って、荷物を持っていないほうの手をとった。
指を数えるように絡ませながら問いかける。
「俺、間違ってない?」
「…なにが」
「なまえ、俺の彼女になったんだよね?」
それを聞くの?という表情を見ると俺は嬉しさがこみ上げる。
なまえが気まずい顔じゃなく驚きと怒りの顔をするということは、俺は間違ってないということだ。
駄目押しで頷かせようと、「ね?」ともう一度聞くとなまえは悔しげな顔の後、頷いた。
俺はそのまま口づけてしまいたい衝動に駆られる。
「なにイチャイチャしってんですかあ…やらしいなー…」
が、誰かの邪魔する声。
振り向くと、チャンミンがデジカメと本を持ってジュンスの部屋から出てきていた。
「あ…ごめんね、チャンミンくん、あたしのせいで部屋移動してたんでしょ」
なまえが申し訳なさそうに言う。
「いいですよ。これのプリントもあったし…ジュンスに貸してた本もあったから」
チャンミンがデジカメを少し掲げると、片手に持った本の表紙が見えた。
タイトルの字は読めないけれど、装丁からしてさっきの本と同じシリーズなのが伺えた。
なまえが苦く笑ったので、俺はどれほどの本なのだろうとまたマンネのおませぶりが心配になる。
「チャンミン…その本…」
「これですか?ジュンス用の日本語の教科書です」
「ジュンスにエロ本で勉強させんなよ!やらしいのはお前だっ」
ユチョン、ユチョン、となまえが手を引っ張る。
「あれ、エロ本じゃないよ」
「え」
「あれ、さっきのと表紙似てるけど、絵本だよ」
「え、まじ、で」
なまえの言葉に俺はやってしまったと思った。
無言のチャンミンを振り返るのが怖くなる。
「…チャ、チャンミン…ごめ…」
「いえ、ああ、なまえさん、これ、お祝いに」
「え、あ、ありがと…」
長い足であっという間に俺の横まで来ていたチャンミンが、何枚かの写真から一枚みつくろってなまえに渡す。
なんのお祝いか聞かなくても分かるが恥ずかしいらしく、なまえは照れながら受け取った。
「ユチョンもおめでとう」
にこっと笑って、チャンミンは俺の肩を叩いて去っていった。
ああ、怒ってないらしい。
よかった。やってしまったわけじゃない。
俺は心底ほっとした。
後でちゃんと謝ろうとチャンミンが部屋に入るのを見届けながら思って、なまえを送るため振り向いた。
ものすごい笑顔だ。
そんなに嬉しいものをもらったのか。
ありがとうチャンミナ…
「どんなの?見せて」
「え、あ…ユチョ、」
「………」
ぅオーーーーイ!!!!これええ!!
思いっきり俺がジュンス襲ってるみたいなってますけどおおおおおおおお!!!!!?
さっきのだ!さっきのバンの中の写真だ!!!
怒ってんじゃん!チャンミン普通に怒ってんじゃん!!!
俺やっぱりやっちゃってるじゃん!!
真相を伝えるべく写真から顔を離してなまえを見る。
なんか嬉しそうなんですけどーーーーー!!!!!
「あ、あの、なまえ?これ、違うからね?」
「ん?」
「俺とジュンス、そんなんじゃないからね?」
「うん、わかってるよ」
顔が「そんなんであってほしい」って言ってます。
写真をカバンに大事そうにしまいました。
ああ、可愛いなあ。素直だなあ。
頑張れ、俺。
負けるな、俺。
半年の恋が実ったじゃないか。
俺が一週間前にこぼした水はこうして盆の中に返ったじゃないか。
諦めるな、俺。
「なまえ…俺のこと、好きだよね?」
「ん?」
「ジュンスと仲良くしてる方がいいなんて、言わないでね…?」
「んー………へへ」
素直ななまえの表情を見て、俺は思った。
どんな趣味でもなまえが好きだと思った時点で、また水をこぼしていたかもしれない。
「なまえ?大丈夫だよね?」
「えへ…帰ったらメールするね」
「なまえ〜!!!」
「ユチョンうるさいですよーぅ!!」
頼むから誰か。
報われない朴有天に愛の手を。
END