ツンデレ
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1階に降りると、彼女はまだフロア案内と相談していた。
立派な受付がすぐそこにあるのに、聞きには行ってないらしい。
「スイマセン」
「はっ?はいっ!?」
「えーと、なまえちゃん、デスか?」
「はいっ!?は、はいっ」
「お母さん…上で待って…」
待ってはないな。
光速で掃除中だった。
モップの水を替えにいった時点で、まだ広範囲がビショ濡れのままだったから…
軽く20分はかかるだろう。
足も洗うだろうから、あわせて30分。
フロア案内を一瞥して、事務所の一つ下の階に休憩所を見つける。
8階を指差して言った。
「ええと、お母さん、ここに居ます」
「8階…ありがとうございます!」
「でも、仕事中なので、ここで待ってるのがいいと思います」
僕は7階を指差した。
彼女は怪訝そうな顔をして、僕をじっと見る。
怪しんでいるようだ。
これだけ顔を見せていても何かに気づく様子も無いので、彼女が僕のことを知らないとわかる。
「仕事って…うちの母、こんな立派な事務所に勤めてませんけど…」
彼女が8階の事務所の名前を見てから僕を見返す。
「ここ、うちの事務所デス。お母さん、掃除しっててー、ここの前でモップのバケツに足入れてコケて…」
僕が説明すると彼女は顔を真っ赤にした。
「あっご、ごめんなさい!」
疑いは晴れたようだ。
エレベータに促すとようやくついてきてくれた。
一旦8階に上がってオバサンに声をかけてから、彼女を連れて7階に降りる。
僕は安いブリックパックに詰まった甘いコーヒーと甘い牛乳を買って彼女に差し出した。
窓に向かってカウンターのようになったテーブルから、彼女は申し訳なさそうに両手を振って遠慮する。
「いや、いいです!悪いですから!」
「なんでデスかー、どっちも嫌いですか?コーヒー、ブラックが好き?」
「いや、あの…じゃあ…これで…ほんとなんかすいません!」
僕がぐい、と差し出した二つから甘いコーヒーを取る。
内心、甘い牛乳がとられなくて安堵した。