ツンデレ
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抱きしめたなまえは少し固くなって目の前にある僕の胸に手を置いた。
力を含めれば押し返せるような手の置き方に、それでも僕は腕をぎゅうと狭くする。
なまえが力を含める気になどならないほど、強く抱いてしまった。
「じゅ、ん、ジュンス…」
なまえの声がくぐもって苦しそうだ。
だけど僕は腕を離せない。
なまえを癒せる日本語が見つからないからだ。
僕のなまえに向けた気持ちは、こうでもしないと表現できない。
頑張るなまえを、眩しい未来に目が眩んで不安がるなまえを
僕はもういいよと癒してあげたい。
そして同時に、さあ行こうと押し出してあげたい。
あと、…けなげななまえの可愛さを独り占めもしたい。
でもそんな全てを表現できるようなお得な日本語、僕は知らないんだ。
ただこの両腕なら何もかもを一度にこなせると思ったので、衝動的に伸びた手でもひっこめたりはしない。
「ジュンス、ってば、…っ」
もがくなまえの手が白いジャケットを掴む。
苦しがっているのか、照れているのか。
僕が頬を寄せた先、なまえの頭のてっぺんの辺りはまたホコホコ温かくゆだっている。
「僕、なまえ、好きデス」
「…っそんな、聞いてない、いま…」
「頑張ってマス、なまえ。我慢、すごいじゃないんですか」
「………」
お得な日本語は見つからないので、思いつくまま日本語に替えていく。
「僕の力も貸しますから…なまえ、負けたらだめデスよ」
「…………」
だんだんとなまえの手から力が失われて、熱い頭も抵抗が薄れ、素直に預けられた。
「…ありがと…ございます…」
胸のあたりに響くなまえのしおらしい声。
僕は胸の奥のほうでぎゅっと心臓が縮こまるのを感じた。
少し緩んだ僕の腕を押し離し、見上げて、なまえが赤くなったほっぺたを見せて笑う。
「ちょっと元気んなった…」
ウフ、と珍しく女の子らしい笑みを見せて照れる。
さすがのツンデレに振り回されてばかりの僕は、二度目の衝動がつれていく先にすんなりついていった。
両手に赤いほっぺたを大事に包んで、今笑ったばかりの唇に僕のそれを寄せてみた。
「っ!!??」
なまえに走った衝撃が唇の向こうで声に、というより音に近いものになる。
ドス、と突き飛ばされて、触れて2秒も経たない間に 僕は狭い歩道の反対端にある花壇にぶつかった。
「ジュ、ジュン、いま、これ、はっはじ…バカ!」
僕以上に不自由な日本語でなまえが何事かを叫ぶ。
そして大きなバッグを持ち上げると、バカ!ともう一度言って事務所のある方角へ走っていった。
僕は花壇の上に若干乗り上げた尻をはたいて、なまえの行った方角を見やる。
止まる様子も無く走っていく、なまえ。
僕は、照れちゃって…などと思ってゆっくりと見送った。
なまえの姿が遠くまで行って見えなくなる頃 はたと気づく。
そうだった。
今のは僕らの初めての。
ということはこれはツンデレしているんじゃなく、怒って突き飛ばされたのか。
僕は慌ててなまえを追おうとなまえを探すけれど、なまえの姿は目前にはもう無い。
とりあえず走り出した僕がなまえからのメールに気づいたのは、ビルでなまえに追いついてからだった。
メールを知らずに謝り倒した僕は「見てないの!?」とそれはそれは理不尽な怒りをぶつけられることになる。
送信者:なまえ
題名:無題
本文:逃げてごめん。でも嫌じゃないから。
僕は携帯を見ながら乗り込んだエレベータで思わずなまえを抱きしめて、今度こそ本当に突き飛ばされた。
これがツンデレの底力だ。
そこに愛情を感じてしまう僕は、やっぱり秋葉なんとかに住むべきかもしれない。
END
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