ツンデレ
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ガードレールを腰掛けにして寄りかかったまま、大きな青いバッグを足の間に置いて呟く。
「…はあ〜…ほんと、あせったあ…」
僕はようやく落ち着いてくれたなまえの頭をぽんぽんと撫でた。
真っ黒な髪の下からホコホコと湯気がたっているように感じる。
「ジュンス、バス乗ったとき、ほんとあせった…しかも一緒降りるし。だめじゃんもー…」
額の汗を手の甲で拭っている。
怒ったような言い方。
ツンデレだからだけじゃなくて、ほんとに僕の立場を心配してくれてるんだな。
僕はその立場を少し呪った。
「有名人だからスイマセン」
「うふ、はは、自分でゆうし」
ようやく笑った顔を見せてくれる。
その甘いほころびに僕も嬉しくなってまた笑ってしまう。
やっぱりなまえはツンデレだ。
二人の時にはこうして愛嬌を見せてくれる。
冷たくされてるなんて勘違いだったと、僕は少し安堵した。
「…ごめんね、怒ってばっかで」
なのに僕の顔を見たなまえは、少しだけ寂しそうな面持ちで謝りだす。
その表情は僕より若い、十代の少女とは思えない寂しさだ。
「…なんかね……。………受験、こんなにしんどいと思わなかった」
暗い声。さっきの愛嬌はどこにいったのか。
けれどようやく分かった気がする。
僕を不安に貶めていたのはなまえの不安だったのだ。
僕はなまえを励まそうと思うのだけれど、うまい日本語が見つからない。
「うち、あんなだから…
大学行っていいよってお母さんに言われて嬉しかったし、感謝しないといけないのにね」
前に、家から近いからという理由であの高校を選んだと聞いたのを思い出す。
弟達がまだ小さいし、父親も居ないから。
母親も頑張っているから協力したかった、と。
「………」
けれどやっぱり言葉は見つからない。
「弟も、嫌いになったんじゃないけど…手がかかったりうるさいのしんどいとか思うし…」
シュンとした呟きに胸が痛む。
「ジュンスもせっかく来てくれたのに…冷たくしてごめんね」
まっすぐ見上げて謝るなまえの目に汗とは別の輝きが見えた。
僕は衝動的に手を伸ばす。