loneliness
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「…ごちそうさま」
「や、…こっち、こそ?」
「…………」
笑いに変えられたらと思って、彼女のくれたごちそうさまを返したのに
彼女は苦笑いで口をつぐんだ。
真夜中のカラオケを出て
こんな時間じゃどこにも行けないなんて言って
タクシーを止めようとしている。
いつもだったらこのままどこかへ連れ込んでた
いつもだったらここでもう彼女は俺の手中だった
いつもだったら
潤んだ目でおれを見つめる女の子を
バカな子だなあって蔑みながら
寂しさを紛らわす道具にして いたのに
「…気を、つけて」
「…うん、ありがと、おやすみユチョン」
「ん、おやすみ…」
おれの方へと後ろ髪を引かれながらタクシーに乗り込む姿を、見送ろうと眺めた。
そこで、おれはまた いつもと違う行動に出る。
「…あの!…さ…」
「なに?」
「あの…ごめん、あの………」
「…?」
「…名前…なん…だっけ………」
不思議そうな顔。
さっきキスした時みたいな。
そして明らかに視線を落として傷ついた表情をした後
「なまえ」
震えた声で答えるとすぐにタクシーに乗り込み、彼女はおれの目の前から去った。
なまえ
携帯を出して、今日のうちに得た番号の中からその名前を探す。
メールアドレス
携帯番号
それがあるだけで、ただなんとなく安心した。
「なまえ」
呟く名前は、少しずつ現実味を帯びていく。
彼女はきっと知らないんだ。
おれにも泣きどころはあるなんて
まさに今日自分がそこを突いたなんて
まさかそれが
おれの心を動かすなんて
「……………」
携帯をブラックアウトさせる。
傷つけてしまった彼女になんて言葉を贈ろうか。
どうやって、許してもらおうか。
許してもらえないかもしれない不安は
取り返しのつかない痛みと一緒に後から後から湧いて出て
皮肉なことに、おれから寂しさを奪っていくのだった。
END
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