寂しそうに太陽が沈んでも
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このままキスをされてしまえば
私はきっと耐えられなくなる
一人で泣く夜にも
その夜に彼が存在しない事にも
次にこの手に触れるまでの先の見えない絶望や
ぬくもりを求めてのた打ち回る瞬間にだって
きっと、もう耐える力は残らない。
「…嫌いに、なったのか?」
「………」
頷くわけがない。
首を振ると脳がぼやけた。
「さわりたいよ。なまえ…」
「私だって」
「もう少ししかないよ、ケンカはダメだよ、もと、さわって、それから出て行きたいよ」
時計に目配せをして、瞼の中の真っ黒な目を全て私に集めて訴えかける。
力強く、けれど焦るとたどたどしくなる言葉が愛らしい。
それでも、出て行く、という目前の結末がはっきり言葉にできてしまうことを、私は残酷に感じた。
たった数分睦みあって、彼がここを離れて
それで私に何が残るんだろうか。
虚脱感や喪失感を、誰が埋めてくれるんだろうか。
ユノは知らないのだ。
この部屋の孤独な時間を。
ユノ以外の誰が居ても、談笑していてすら、苦痛にしか感じないこの部屋の空虚さを。
「怒ってるんじゃ、ないの。すねてるのでも、ないの…」
「怒っているだろう?ぼく、謝るよ。ぼく、悪かったて思っているよ」
「ちがうの…」
ただ求めているだけだ。
けして与えられない時間を
どうしたって手に入れられない時間を
未来永劫、彼を束縛する現実を
ただ
ひたすら
心の中でだけ駄々をこねているだけだ。
「キスしよう。ね?なまえ、おねがいだから」
「………」
探しあぐねていた最後のキスを落とす場所
私からすれば今なら終われると
いつも いつも
何度も探したのに
結局また、こんなふうに彼からの口づけで瀕死のまま生かされるのか
そう考えると、目の前の唇はとてつもなく甘い毒のように思えた。
少しずつ
少しずつ
焦がれて死ぬ毒。
「なまえ…」
「…わかった」
孤独に苛まれて苦しみながら焦がれ死ぬ毒を
優しさだけをもって私に与える彼という人。
それでも私は、どうしても諦めきれない。
「なまえ、すきだよ。ごめんな。さびしいな」
「…ううん、ユノ、謝らないでいいから」
「すきだよ…」
「うん」
寂しそうに太陽が昇っていく。
沈む時にはもう彼は居ない。
「あいしてるよ」
「うん」
口づけをもらって
また、最後のキスは奪われて
こうして、さよならを言えない今日が
明日も明後日もその次も続いていくこと。
それが未来永劫に彼を束縛する現実なのだという真理には
最後のキスを落とす場所すら探しあぐねる私では、まだ気付くよしもなかった。
END
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