At least only now
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「…ただいまあ」
ドアを開けると、ひどい顔。
何がそうさせるのか、彼は会うたびに やつれて
私は恋人だというのに、何もできない無力にいつも打ちひしがれる。
「おかえり、ジェジュン」
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At least only now
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新しく家族になった猫は元気?と聞くと、ニットの帽子を脱いで髪を散らしていた顔が幾分明るくなった。
どうやら、今は彼の癒しは猫のようだ。
もともと細面なのが最近とみにシャープになって、少しくぼんだ頬に影がある。
それでも猫のことを話して、と促すと頬は赤くなって身振り手振りも大きくなった。
「すっごい元気な子でえ、はっしゃいでばっかで、でも自分が手出すと引っかくのお」
「ははっ飼い主と思われてないじゃん」
「餌?って思てるとおもう…」
ニットに包まれていたせいか、髪の上の方は散らしても変にまとまっている。
静電気で立った一筋の髪がまさしくアホ毛と呼ばれるそれに見えて、餌という言葉もあいまって吹き出してしまった。
「なに。なになに。なにおかしいのお」
「アホ毛…立ってるよ…あはっ」
指差すと、ジェジュンはパパっと手を頭にやり、器用な指先でまた散らし始める。
なるほど猫にだってなめられるわけだ。
「…もお…笑うのやめってよお!」
「あは、ごめん、ふふはは」
見下したような空気を察してか、笑いを潜めない私に手を伸ばす。
顔に似合わない大きな手。
引っかき傷は猫にやられたんだろうか。
低いテーブルをぐいっとまたいで、デニムの足がこちらのソファに乗ってきた。
もう、と口を尖らせながら、まだ整わない髪をさらりと私の肩に触れさせる。
けして広くない私の肩。
女の子みたいにそこに頭を預けるジェジュンは頼りない。
ここから見ると、やっぱり痩せたように見える。
「…つらい?」
「なにがあ」
「いま」
「ううん…」
「さみしい?」
「前からあ」
「ずっと?」
「うん…」
「………」
「でも今はもっとさみしい」
「…………」
「………なまえ…」
「んー…?」
「…きらいにならないでえ…」
伸ばされた手が躊躇して、私を抱きしめるのをやめた。
さらりと落ちる髪。
頬に触れると、乾いた肌は冷たかった。
「ならないよ」
「……ありがと」
「ジェジュン」
「うん」
「抱きしめていいよ」
「うん」
「………」
「……頑張る…」
細い輪郭
冷たい肌
乾いた唇も
全て受け止めたい。
遠慮がちに抱きしめるジェジュンの腕に口付けながら
私は猫のように、喉を鳴らした。
END
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