My little princess
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「ユチョニヒョン…ちょっといいですか?」
「ああ、もう今度はチャンミンか…」
レッスンルームのピアノの前。
もうレッスン生は宿舎に戻ったというのに、ユチョニヒョンは延々ピアノを弾き続けていた。
言葉尻から分かる。
きっと僕の前にも誰か来て、同じ表情で同じ話をしたのだろう。
「謝らないし、撤回しないし、本音だよ。後、なに?」
どうやら…謝れ、撤回しろ、本音じゃないんだろう、と言われたらしい。
行動の早い3人に感心した。
その間もユチョニヒョンの手は止まらない。
「…その曲、初めて聞きます」
「まだ未完」
「これ、ヒョンが自分で?…最近外泊してたのって…」
「うん。…早く、作り上げたかったから」
作曲の勉強は5人ともにもつ課題だ。
しかし彼がここまで作り慣れているとは思わなかった。
優しい音色。
彼の心が鍵盤を叩く指に込められているのか…少し荒い。
「…………」
「こんなの聞きにきたんじゃないでしょ」
「……はい。でも…なんだか言葉を失いました。…聞いていっても?」
僕の質問に何も答えず、だが追い出すでもなく奏で続ける。
その隣に椅子を引きずって腰掛け、滑るように鍵盤に触れていく指を見つめた。
「……チャンミンはー…スカウトで来たんだっけ…」
「ええ、でもオーディションは受けましたよ」
「そっか…声いいし、うまいしなーチャンミン…」
「喉は強いなって、褒められますけど…そんな風には僕は…」
「学校も頑張ってるし…根性もあるしな」
何の気も無い風に褒められて気恥ずかしく感じた。
なんとも言えず居心地が悪く感じて、照れ隠しに話題を変える。
「あの、なまえのこと…すみませんでした」
「………」
「あんな風に食ってかかって…ごめんなさい」
「いいよ。おれもごめん。意地悪かった」
「…ヒョン、あの、なんで彼女にあんな言い方…」
「…………ひどいと思う?」
「だって、誰も止められないじゃないですか。快く見送る以外に…」
「…だよな」
ガン、と重い音がして手が止まった。
心地よく感覚を引っ掻いていたメロディーが急にやむ。
そして、書き足して書き足して創りあげられたはずの楽譜をユチョニヒョンが握りつぶした。
「…あっ…なんで、ヒョン」
「もういらないから」
「え、でも…もったいないです」
「もったいないよな。おれも思う。でももういらない」