My little princess
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彼女はなぜこんな場所を知っているんだろう。
人知れず泣く時にはいつもここへ来るんだろうか。
今まで僕の知らない時にも、こうしていたんだろうか。
レッスン室の入ったビルの屋上は風が強く、なまえの小さな体では吹き飛ばされてしまいそうだ。
「……………」
「………ユチョンオッパを、怒らないであげてください」
「……………」
「私、傷ついたんじゃないんです。本当に、気にしてません」
「…うそだ」
話す前に小さく鼻をすすっていたのだ。
涙も確かに流れていた。
なのに彼女は今、笑っているような声で僕に話している。
「…そんな顔、しないでください」
「……ユチョニヒョンと、もう一度話すよ」
「……チャンミンオッパ」
「なまえが行くまでに、絶対」
「チャンミンオッパ」
「……………」
「もう、いいんです」
振り返った彼女の顔は、やはり笑顔だ。
どうして笑えるんだ。
悲しいはずなのに
悔しいはずなのに
「…ユチョンオッパの気持ち、私、少し分かります」
「どうして…どうしてかばうんだよ?」
「ほんとは悩みました。私。おばあちゃんのところに行くこと」
「当たり前だ、悩まないわけない!」
「少しだけ、考えました。家族と離れて…夢を叶えること…」
「なまえの歌なら、ダンスなら、当たり前だよ、諦めるなんて、どんな思いで…!」
「…ありがとうございます」
僕の気持ちだけが前のめりに彼女に向かっていく。
なのに、彼女の笑顔はそれをいなして、風に乗せてどこか遠くへ飛ばしてしまうようだった。
ユチョニヒョンへの怒りも
ユノヒョン達への憤りも
彼女に対する 想いも
どこか、ずっと遠いところへ。
「だけど、私、諦めるんです」
「…………」
「逃げるって思われても仕方ないんです。夢が遠いから…近くにいられる、家族を選んだって思われても…」
「そんなことない!君は逃げるんじゃない!」
「…………」
「誰だって家族が大事じゃないか!当たり前の…みんな、そんな君のこと…!」
「ほんとは私、恨んでました」
「………っ?」
「おばあちゃん、どうして、今なの、……って…」
僕は喉元まで出てきていた安易な言葉を飲み込んだ。