My little princess
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今日もなまえはレッスンに出ている。
日本に行く準備もあるのだろうに、来られる間は来たいと自ら志願して来ているらしい。
整列していた女の子たちが先生の合図で一斉に頭を下げ、続々壁際へと散らばっていく。
レッスン室の窓ごし、僕はなまえにだけ手を振った。
「…チャンミンオッパ!」
「今から休憩?」
「はい、10分だけ…どうしたんですか?」
「あー…いや、来てるかなあって、思って」
「……ふふ、泣いて、もう来ないと思いましたか?」
可愛い笑顔で挑戦的なことを言う。
小さな顔に似合わない大きなドリンクホルダーのストローに口をつけて笑った。
「それで…いつ行くの?」
「今週の末にレッスンを終わって、その日に宿舎も出るつもりです」
「そっ…か、……急だなあ」
「えへ…お世話になりました」
なまえが胸に手を当て、丁寧にお辞儀をした。
勢いよくあげた顔から汗の粒が散り、一つにまとめた髪の生え際であどけない産毛が光っている。
今見たお辞儀のように 華奢な手足をいっぱいに伸ばして踊る彼女のダンスには、色気こそもちろん無いものの凄烈な印象を僕は持っていた。
精一杯に存在を訴えかけてくる眼差しと手足。
歌にしてもダンスにしても、ただ必死にやっているだけだと彼女は言うけれど…
とりえの無い僕にしてみれば 必死なだけで人目をひく彼女のパフォーマンスは素晴らしい。
それがもう 見られなくなるなんて。
あと数日。
たった、数日。
…何か言いたいのに言葉を探しあぐねて、そういえば、と話題を持ちかける。
「その、ユチョニヒョンとは話した?」
「…話してないです。…なんて、言っていいかも分からなくて…」
「…仲直りしてから行かないとね」
「はい。…中途半端に夢を諦めるのは本当だから…許してもらえるか分かりませんけど」
「許すって、なまえは何も悪くないでしょ」
「うーん……えへへ」
濁して笑うなまえ。
意見を撤回する気は無いのらしい。気にやむことではないのに。
僕だって正直、諦めてほしいなんて思わない。
けれど夢を諦めることを一番悲しんでいるのは、僕でもヒョンでもない。
なまえ自身じゃないか。
何かしてあげたい。
悔やまないような言葉を、何か。
けれどもうすぐチャイムが鳴る。
僕も戻らなければいけない。
気が急く思いで僕は言った。
「僕がユチョニヒョンに話をしておくよ」
「えっ…い、いいですよ!気持ちだけで!オッパ!」
「なんとかするから、安心していいよ」
言った時には、僕には説得できる自信があった。
だって僕らは約束したのだ。
彼女は僕ら5人の宝物だ。
みんなで大事にするんだ。と。
ユチョニヒョンも そう、約束したのだ。