ころがる林檎
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彼の家は門限が厳しいはずだ。
今まで会ったことはなかったのに…こんな時間に、どうして。
「…部活?」
「…ええ、あ、…試合、…もうすぐ、なんです」
「そ…っか、頑張るね、遅くまで。大丈夫なの?家…」
「ああ、ええ。試合前だけは特別に……先輩は?」
「え?あ、あー…友達、の勉強会…近くで…あって」
「…………そうですか。お疲れ様です」
会話の後ですぐ、頭を下げて歩き出す。
私も、うん、と歩き出した。
あの時と同じ、二人で逆の方に歩き出す坂の上。
てっぺんで擦れ違うというただそれだけのことがなぜか辛く感じた。
通り過ぎ、隠し通した涙を拭いて鼻をすする。
「…先輩」
「え!あ、はい、なに?」
「…大丈夫、ですか?」
「うん、あは、ちょっと風邪…ありがと、おやすみ」
「…………」
いたたまれず衝動的に駆け下りた坂は涼しくて、本当に風邪をひきそうだと思った。
汗がまとわりつく。
振り切れないのがどうしてか怖くて、加速度を増して走る。
もつれそうな足取りの私を、あっという間に足音が追ってきて捕まえた。
「みょうじ先輩!」
「…っわ、…!」
「…はあ、……心配、なので、送ります」
本当に心配そうに言ったチャンミンの手は、掴まれた私の手より少し大きくて
いつの間に、こんなに足が速くなったのだろう。
追いつかれる予定では無かった私の背中を 汗が、じっとりと伝った。