ころがる林檎
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走り出した足は
もつれそうだったけど、速度を落とさなかった。
そのまま電車に乗ったら汗がどっと噴き出して服が濡れたけど、駅に着いてからまた走り出した。
まとわりつくものが表面を撫で、後ろへと私を引っ張りながらこの体を離れていく。
それは思い出だったり、後悔だったり、罪悪感だったり
そんなものが振り抜く腕の指先から少しずつ吹き飛ばされるたび 夏が終わるのを肌で感じる。
夕日が沈む反対側に、もう夜が来ている。
冷えた汗が涙のように飛び散って、それでも坂を駆け上がった
「……チャン、ミン……!!」
見上げた彼が振り返る坂道は 今日最後の太陽で真っ赤に輝いて
「私も…!今日もまだ、ずっと、……あっ明日も…!」
「…………」
「好き…だよぉ…!!」
夜を背負った私の叫びに、チャンミンはしばらくして背中を向け、顔を隠した。
しゃがみこむチャンミンの背中は近づいてみれば小さくて
上ずるそこに頬を寄せ、抱きしめる。
「は、…は、ごめ、んね……チャンミン、じゃないと、私、…だめ、だよ…っ」
正面に回って覗き込んだ。
指の隙間、うそつき、と罵った目は真っ赤に濡れていて
ずるい私は 胸を抉る台詞を二度と聞かないでいいよう、チャンミンの唇を柔らかく閉じる。
荒げた息をぶつけた後、顔を見るなんて到底できずに俯いて、目を開けると幼い男の子のような私の足。
ここまで連れてきてくれてありがとう。
ここにある足だけではなく、この幼い足を突き動かした全てのものへ
感謝する間もなく滲んだ視界は チャンミンの泣き顔に奪われて
涙に濡れた唇同志、もう一度夜空に包まれ
触れ合った。
END
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