ころがる林檎
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同じ学年でも全く違うクラス、違う選択授業、違うグループだったジェジュンを、梅雨に入って私に引き合わせたのはユチョンだ。
うちの弟は友人の層が変わったと思ったら急に夜遊びをするようになって、それでも朝練にはちゃんと出る根性はたいしたものだが、日に日に性格が悪くなっていくようだなあ
なんて思っていたら、ある日うちのリビングにジェジュンが居た。
学年でも、派手な外見とミステリアスな行動で賛否両論多い注目の的。
先生に進路を聞かれて『歌手かホスト』と言ったとか言わないとか、いろいろ聞いていた。
それらの情報にも、本人にも、全く興味を示さずに居た私だったが…彼が家に居るのを見てユチョンの素行悪化に合点がいった。
しかしそれも彼らの人生だ、と通り過ぎようとした私が立ち止まったのは、ジェジュンの言葉があまりにひどかったからだ。
『ねー、みょうじさあーん、ユチョンから聞ーたんだけどお、おとーとの友達、ポイ捨てしたってー、ほんとおー?』
弟の友達。
そう称されたチャンミンとの、真剣に向き合った結果の別れ。
まだ生傷のまま癒えていなかった私には、この上ない挑発だった。
気がつけばジェジュンの頬を張っていた私をユチョンが引きとめたのはつい数週間前なのに
「なまえ…ねーこっち向いてえ」
「いや。教室帰らないともう人来るよ」
「だからあ!今しか無いじゃあん!ね!」
「やだ、近い、ジェジュン」
「いっかいだけ…」
「いや」
「いっかいだけするもん」
「い、……ん、んー……」
…さすが、火のないところに『進路は歌手かホスト発言』という煙を立てた男。
どんなに嫌がっても最後には「しょうがないな」と思わせる綺麗な顔だちと 唇を奪う時の強引さはさすがだ。
この短い間で私はジェジュンについていろんなことを知った。
彼自身は確かに女慣れしていて夜遊びも激しいが、素行ほど頭や性格が悪いわけでは無いこと。
だからユチョンとの友人関係に口をはさむつもりもない。
そして噂のように受験に対し消極的ではなく、背中を押せば早く進む足を備えていること。
だから彼の勉強に付き合っているのは嘘でも冗談でも、ましてや言い訳でもない。
「…あーなんか…初めてちゅーしたのもここだったねー…」
「………」
「まだ付き合ってなかったから、なまえ、すっごい怒ってえ、でもちゃんとおれの話聞いてくれたんだよねー」
「…だって、嫌わないでって、泣きそうな顔で言うから」
「なまえの試合見てからずっと好きだったんだもおん」
「引退試合でしょ。こないだじゃん。ずっとって、ちょっとでしょ」
「ずっとでもちょっとでもいいけどお、試合の時はさー、なんか彼氏居たしー、おれなんて興味ありませんて感じだったしい」
引退試合。
私にとって思い出したくない結果は、そのちょっとの間に記憶からかき消えた。
思い出せるのは
窓から見えるあの校庭がやけに広く感じた事と
不本意な試合の後に触れた、やけにサラサラしていた砂。
両手から零れ落ちた砂はもう戻らない時間を私に突きつけ、あんなにも泣けたのに。
私がその涙を忘れられたのは、私ではなくジェジュンがその涙を覚えていてくれたからかもしれない。