ころがる林檎
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昼間に訪れるこの坂は、清々しい風がぼうぼうと吹いて立っていられない。
さっきジェジュンにほどかれた髪が風に奪われ、苛むように何度も頬を打つ。
心なしか温さが消えた風は夜空のように私を癒してはくれない。
今さら さよなら、と呟いても、ごめん、と呟いても 少しも泣けはしなかった。
身勝手な私にはもう
癒される場所すら与えられるべきではないのだ。
「……………」
溜飲が下がることのないまま、無神経に吹き続ける爽やかな風に押され 坂を下る。
いっそ転がり落ちても泣けはしないのだろう。
それでも転がり落ちてしまえばいいのに
子供のような足は一歩一歩と地面を踏みしめ、私を駅まで無事に運んだ。
バカ、と膝に向かって呟いてから降り立ったのは、結局行き場が無い私の帰る場所だった。
「おかえりなさい」
「…ただいま……ユチョンは?」
「…たぶん、彼女さんの呼び出し、で…2、3時間で戻るって…」
「ふーん……彼女居るんだ…あいつ」
「あ、はい…」
「変なの」
通りがかったユチョンの部屋にはチャンミンしか居なかった。
声をかけられて振り返った時、乱れる髪ごしに見えたチャンミンの視線が とても強いように感じて。
消耗しきった心臓がそれでもわずかに跳ねた。
会話する気力まではなくて、惰性で返事をする。
「…ふ、…変って…」
「……家族から見ても、あの子はあんまり…いい男ではないから、ね…」
「…はは」
その返事も、空気を読んだ笑い声で掬い上げてくれる。
チャンミンの笑顔で胸のつっかえが薄れた気がした。
ほう、と息をつく。
「…おにぎり、買ってあるんだけど…食べる?」
「…いいんですか」
「うん」
私はやっと気力を取り戻して、ジェジュンと食べようと持っていた袋を掲げて見せた。