ころがる林檎
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早朝の学校。
更衣室から伸びる階段を汗まみれで駆け降りてきた男の子たち。
「あみょうじ先輩、はざーす!!」
「はざあーっす!」
「…………おはようございます」
「………おはよう」
少し前までは数人の後輩と同じように明るく返せていたのに。
たった一つの覇気の無い挨拶に、私は吸い込まれるように元気をなくしてしまう。
気まずい元恋人。
そんな風にくくってしまうには
私とチャンミンは幼く
純粋すぎた。
・・・・・・・・・
ころがる林檎
・・・・・・・・・
つい一ヶ月前に引退試合をした校庭を横目に、渡り廊下を通り過ぎる。
あの時の喧騒が耳の中にまだ残っていて 静か過ぎる現実は耳に痛い。
もう部活には出ていないのだから早起きをする必要なんてないのに、どんなに暇を潰してから登校してもクラスの誰より早く学校に着いてしまう。
三年生だけを隔離した校舎の一番上、さらに一番奥にある教室へ皆が登校してくるまで、おおよそでもまだ30分以上ある。
朝でも陽射しを強く受ける校庭を窓の下に見ながら、窓際にある自分の机の上に座った。
誰も居ない時間が数分続いただけで考えてしまう、今までのこと。
あどけない笑顔や怒ったみたいな困り顔、口の片端だけを上げた最後の笑顔。
そしてその顔を覆い隠すようにすぐ現れる、冷たく綺麗な別の顔と、意図の読めない目。
女の子みたいにはしゃぐ笑顔が続いて
昨日初めて見た、真剣な男の表情が 私を苛む。
耐え切れずうつむいた視界でスカートの裾から揺れる、幼い男の子のような、子供みたいな私の足。
昨日までと何も変わらないはずなのに急に恥ずかしくなって、スカートの裾を延ばすように引っ張った。
「おはよ、なまえ」
「………………おはよ」
「……昨日、…よく眠れたあ?」
「…おかげさまで」
不意に教室に響いたハスキーな声。
珍しく早朝に登校してきたからか、ジェジュンはいつになく低めのテンションで話しかけてきた。
「まじでっ?おれ、ぜんっぜん眠れなかったんだけどおー!」
かと思えばこうして急にテンションを上げてくるから、つかめないなあ、と思う。
昨日だって、今まで知らなかった顔をしていた。
「さっきユチョンと、更衣室んとこの階段で会ってさー」
「うん」
「なまえが推薦とれてるからってえ、一緒に遊んでていいんすかーってすんごいニヤニヤ笑われたあ」
「うちの弟にしてはまともな意見だね。その物まね似てないね」
昨日までと変わらないジェジュンの様子にほっとして、いつものように話せることに気付く。
可愛くない弟の発言がきっかけというのも、また違った意味で恥ずかしいのだが。
そういえば昨日の夜、いつもより遅くに帰った私にもユチョンはニヤニヤ笑いかけていた。
ユチョンは一つしか年が変わらないからか、いつも弟とは思えない見下しぶりで私をバカにしている。
昨日もそんな顔で「無理して帰ってこなくても、泊まってきたらよかったんじゃないの」と言って風呂に行った。
ジェジュン先輩の勉強見るのって大変なんだね、と付け加えて。
ユチョンには言わなくても見抜かれてしまっているのだ。
私が昨日、ジェジュンの部屋の、ジェジュンのベッドで、いったい何をしていたか。
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