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緑の文字でstaffと書かれたドアの前。
私に笑いかけた顔をドアに向け、彼が無造作にノックした。
「っちょっと…、いいの?」
後はトイレに続く2つのドアと、開けてはいけない地獄に繋がるドアしか無いのだから、逃げたければそこを叩くのは当然なのだが…こんな状況を説明して聞いてもらえるものなのだろうか。
後ろから問いかける私に、彼が自分のジーンズの太ももを指差す。
促されて見ると、丸く大きな緑のシールに「access all area」と書かれていた。
関係者なのだとそこで初めて知る。
そして開いたドアの向こう、カウンターの中からバーテンが顔を見せた。
「ああユチョンさん、なに?」
「あーあのー…ここお、通してもらいたいんすけど…」
「ん?ここ?どうしたんですか?あっ女の子?」
お持ち帰り?とでも言いたげに笑うバーテンと目が合った。
「…あれ、なまえさん?」
「え、…あっ、あー、えっこっちに居たの?」
「知ってるの?」
目が合って初めて、半年前フロア横のカウンターに居たバーテンだと分かった。
久しぶり、と笑ってようやく私は安堵する。
彼なら共通の友人も居て、初対面の人よりはよほど安心できる存在だ。
半年ぶりなのに覚えていてくれたことにも喜び、笑顔を見せると、バーテンにユチョンと呼ばれたその人もまた笑顔を見せた。
「あの、なんかね、あそこの奥のソファに座ってる人と飲んでたんだけど…」
「え、どれどれ?」
カウンターから外に見えないよう、ソファを指差し事情を説明する。
バーテンらしい動きで、不審にならないよう視線を動かし、確認してくれた。
「あー、だめだめ、あの子達次なんかやったら出禁なる子なんで関わらない方がいいですよ」
「あー…やっぱりそうなんだ」
「…ね?」
「…ごめんなさい」
手を握ったまま私の顔をうかがって、言ったでしょ、という風に笑う彼に、私は疑ったことを謝るしかなかった。
「…で?二人は?知り合いですか?」
「え、いや、私、助けてもらっただけで、」
握り続けている手をじっと見るバーテンの視線に気付いて、私は手を振り払う。
「ほんと、ありがとう、ごめんね、なんか」
続けざまに謝って、腰をかがめるとカウンターの中を通り抜け、反対側のドアに向かった。
「え、もう帰るんすか?」
「うん、もうなんか、怖いし…」
「えー…なんか飲んでってくださいよっていうか、ユチョンさんもなんか飲んでくださいよ」
「でも、あのソファに居る人に見つかるのやだし…」
ドアに手をかけるとまた体重がどこに向かったか分からなくなる。
「…おごって?」
「はっ?」
また引かれた先にあった体に体重が落ち着いていて、上から降ってきたおねだりに素っ頓狂な声を上げてしまった。
「ああ、そうそう。なまえさん、ユチョンさんにお礼しないと」
その向こうで笑うバーテンの笑顔。
「助けてもらったんでしょ?」
そう言って笑う顔の中
目だけが、¥マークをしていた。