signal in the square
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何を、と思ったが、それは私のではなくジェジュンのものだった。
「……なにそれ、アドレス欲しいだろってこと?」
「んーん、それはもぉ、もらたしぃ、あげったからぁ…」
「は!?え!?いつの間に…」
「…はい」
ジェジュンが自分の携帯を操作し、電話帳を開けて見せる。
そこには私の名前と、アドレス、電話番号、住所とが入っていて…
私は、赤外線というものの恐ろしさを垣間見た。
しかし、恐怖はそれだけでは終わらない。
「何、これ、何!ちょっと!!」
画面が降ろされ、電話帳の画像欄に現れたのは…
「なまえでっしょ、はっはは!?」
私の寝顔。
「ちょっと何撮って、や、やめてよ!!消してよ!!」
「やだぁ」
さっきと同じように手を伸ばしたのに、今度はうまく避けられて携帯を高く持ち上げられてしまう。
そのままジェジュンが歩き出したせいで、ジェジュンの周りをうろちょろしながら玄関までついてきてしまった。
その間に携帯はしっかり鞄に入れられ、それを前に抱え込んだジェジュンが座り込んでブーツを履き始める。
「ね、ほんと、消して、それ恥ずしいから、ね、」
「なまえのぉ、消さなかったしぃ、これでフェアじゃないんですかっ?」
「そんっ、でもそんなっそれとこれとは、だいたいあれは趣味でっそれは嫌がらせ…」
人の抗議をものともせず立ち上がるジェジュンに食って掛かると、あ、と前置いてジェジュンが口を開いた。
「昨日はぁ、ありがとごじゃいます…」
狭い玄関なのに、深々と頭を下げる。
昨夜は狭いのなんの言ってたけど、こういうとこは礼儀正しいんだなとびっくりした。
「や、まあ…酔っ払ってたわけだし、まあね…泊めてあげるくらいは…どういたしま」
「あーそれも、なんですけどぉ…そうーじゃなくってぇ…」
「はい?っわ」
「…綺麗って、言ってくれたんじゃないんですかぁ」
「…っ」
急に上半身をかがめ、背中を指差す。
狭い玄関でそんなことをすれば当然のように目の前はジェジュンの顔で。
嬉しかった、と笑う彼の顔はそんな距離関係ないみたいに屈託無く花咲いて。
またカメラを持つ手を刺激するような幸せな表情を見せ付けられた私は、両手で衝動を抑え、なんとかこらえた。
出て行こうとドアを開けるジェジュンが振り返る。
「あーわっすれてた」
「な、なに、こんどは」
「あのー、自分もー、趣味なんですよねーカメラ…」
「はっ?」
「さっきみたいなぁ、ひとの変顔、撮るのー…はっはは!?」
「…ちょ、ちょっとぉ!失礼でしょうがあ!」
もう一度食ってかかった私に、ジェジュンがまたも身をかがめた。
衝動を突き動かすあの笑顔で、言う。
「またぁ、…撮りに来ますね?」
両手で掴むカメラが壊れそうだと思うくらいの理性とのせめぎ合いの中
ギリギリのところで押し勝った理性は しかし手を抑えるのが関の山だったようで
私は昨日と同じようにまた首を折り、頷いていた。
趣味仲間というにはあまりにも趣味の悪い始まり。
ジェジュンが笑顔で閉めたドアの内側で、一つだけ。
大きく、そしてやけに熱い ため息をついた。
END
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