signal in the square
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「動かないで」
眠いのはよく分かっていたけれど、さっき冷酷になったきりの私はジェジュンに声をかけて立ち上がる。
ヒラヒラした袖と裾で腕にまとわりついてくるシフォンのカットソーを、勢いよく脱ぎ捨てた。
床に落ちたそれが目の端に映ったのか、ジェジュンが驚いたふうに半身で振り返る。
「…動かないで」
目があったジェジュンにもう一度言い渡した。
妙に目を輝かせてこちらを向いたくせに、中にもう一枚着ていたことを確認すると、はい…とまた前を向く。
私はそれを見届け、棚の上にいくつか置いてあったカメラのうち1つを手にした。
それを通して、小さく囲われたジェジュンの背中を見つめる。
うん。やっぱり。
この背中…けっこういい。
ここ数日、雑用として見ていた撮影風景でずっと思っていた。
彼の背中はとても絵になっている。
それは身体自体の造形の美しさもさることながら、彼の身体の動かし方や中性的な所作にもよる。
そして、何が起因しているのか分からない寂しげな空気と、真逆にも関わらず共存している幸せな空気にもそれは増幅されて。
一度でいいから、この背中を 自分の定めた空間の中に切り取ってみたかった。
それはさすがに叶わなくとも、一度生で見るくらいは今日のような迷惑の代償に許されるだろう。
そう思って脱がせた服の中に
…こんな、予想以上のものが隠されていたなんて。
「動かないでよー…」
後ろから慎重に声をかけ、ジェジュンがおっとりと返事をしたところでシャッターを切った。
四角く切り取られた背中は生で見るよりも寂しさを帯びた姿になり、焼き付く。
それを見て「もっと」と貪欲になったところでジェジュンが声を上げた。
「!?えっ…」
「動かないで!」
「えっ、やだ!写真だめっ!」
「うるさい!」
「だめぇ、誰見せるの!?誰!?」
「見せないよ!私が見るの!いいから前!」
うそ、とまだ言い募るジェジュンに近寄り、ベッドに片膝を乗せた。
「…私が見るだけ。信じないの?出てく?」
「………こわ、いぃ〜…」
片手を伸ばしてジェジュンの背中に体重をかけ、前を向かないと追い出す、ともう一度脅迫する。
すでに脅迫のつもりで言っているので、怖いと思ってもらって結構だ。
ジェジュンは本当にしぶしぶ、といった様子で前を向いた。
私はいつでも実力行使で前を向かせられるよう、ベッドに片膝をかけたままカメラに目を移す。
とてつもない寂しさと、湧き上がる幸せと。
なぜか彼の背中に共存しているそれを、満足いくまでこの手に閉じ込めるまでは
解放するつもりはもうなかった。