chocolate and a cake
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「あっ!やーっと見っけ…っオイ!え!どこ…お前っ帰んの!?」
「ごめん!」
「えっやっまじで!?ちょーっケータイ教えるってさっき…!!」
「もーしわけないっす!」
駆け抜けた女の子と男友達の前は暗くて、おれにはもう誰が誰かも分からない。
どちらにでもなく謝って、急いで店を抜け出した。
タクシーは意外とすぐに捕まって、おれが急いでる様子なのを察してか宿舎までをものすごく短距離で走ってくれた。
けど。
「おー、おかえりユチョン」
「は、はー、なまえ、来なかっ、た?」
「来なかっただけど…なんだ一緒じゃなかたの?酒くさいよ?」
玄関にはいつもどおり、4人ぶんの靴しかなくて
地上に上がってから何度も確かめた携帯にも、着信はなくて
…かけても、つながらなくて。
ああ、そっか
おれがどんなになまえがいいって
なまえじゃなきゃイヤだって、思ったって
なまえにはそんなこと、何も伝わってなんか ない。
「ユチョン?大丈夫か?おい、飲みすぎたの?」
玄関でしゃがみこんだおれに、ユノが呑気に声をかける。
大丈夫じゃない。
大丈夫じゃないよ。
なまえに愛されてなきゃ
おれはちっとも大丈夫になんかなれない。
とにかく
今すぐ
なまえに会いたい。
「あ、ユチョン?こら、どこ行く、ユチョン?」
ついさっき入ってきたドアを開けて廊下に出る。
ユノが後ろからついてくるのも無視して、さっき上がってきたまま待っていたエレベータに乗り込んだ。
「こら、待ちなさい!もうダメだよ?外出は!」
「むり!むりだよ!もう!ついてこないで!」
「なんだよ!こら、なんでまた出て行く?」
閉まる寸前に滑り込んできたユノが グズるおれの腕を掴んだので、開ボタンに触れないまま扉が閉じて指定した一階へと降りて行く。
「会いたいんだよ!なまえに!」
「さっきまで会っていたんだろう?」
「ちがう!もう!ずっと…!」
「なに、なん、ユ、泣いているのか?」
「ずっと…会ってな、いぃ…!」
窓の外、いくつもの風景を下へ滑り降り、一階にたどり着く頃には
ユノに手を掴まれたまま、おれは泣いてしまってた。