chocolate and a cake
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もうすぐ時計は23時。
約束の時間から、2時間過ぎた。
30分遅れるってメールは来たけど…そっからもう、1時間半。
「…なんだよ、会いにくるなんて…やっぱー嘘じゃん」
反省会と称した呑み会を、メンバーと口裏を合わせ、ちょっと体調が…なんて言って一人抜けてきた宿舎。
いたって元気な体を、ベッドに倒した。
時計の針はおれの不満なんて歯牙にもかけず、時間を細かく切り刻んでは進んでゆく。
さすがに、おれにだってわかる。
おれはまた後回しにされたんだ。
…仕事なんてもー、なくなっちゃえばいいのに。
「、わ。…はい?もしもしぃ…?」
急にかかってきた電話に、携帯を握り締めていた手がものすごい速さで反応する。
電話に出て相手が分かったところで、ドキ、と跳ねた心臓1回分、損した気分になる。
喧騒をバックにおれを呼ぶ男友達の声は既に少し酔っていて、その後ろからはピンク色の声が聞こえた。
『あ出た出た…ユチョン?起きてんなら来いって、どうせカノジョ来てないんでしょ?』
無造作に地雷を踏まれても、言い返す気力も無い。
みんな思ってんだな。
おれがもう、飽きられてるって。
なんも言わなくても現状を言い当てられちゃうくらい、いつもの事なんだ。
おればかりが待って
おればかりがしがみついて
おれがやめれば、この恋はもう…
「んー…でもー…」
『あっもしもしぃ!?』
「え?誰すか?」
『あっファンですー!』
どんどん暗くなる思考に疲労して、話すのも億劫で。
歯切れが悪くなった返事に被ってくる、頭の悪そうな、度の過ぎた明るさのピンク色の声。
わかんないかー、なんて後ろの友達と話して笑ってる。
イタズラ電話ギリギリだな。
でも、なんか
『あのー、ほんと、ファンなんでー、できたら来てほしいなーって…ウザいですかー!?』
『うーん…ちょっとー…はは』
『あっ、ですよねー、すいません!!ははは!』
…なんか、このくらい元気なら、おれが話さなくてもよさそうで、ラク、かな。
『だめすかねー!ほんと!ちょっとでいいんで!』
「あー、じゃー…ちょと、だけ…」
『まーじすかー!あっかわりますねー!!…来るって!はい!』
『…おー…じゃ、いつもんとこでー…てかまじ来いよお前、まじで!』
「…んー、いくいくー…」
最後まで騒がしい電話を切って、用意してあったジャケットを羽織る。
それから、未練たらしいおれは時計が23時を指すまでの数分間、携帯をじっと見ていたけれど…
やはり、着信がくることは無かった。
「…は………あーあ…ざーんねん…」
…仕方ないよ。
おれ淋しがりだし。
ごめんねなまえ。
ちょっと遊んでくるね。
どんくらいがちょっとなのか、…わかんなくなってきちゃった、けど。