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コンビニを出て、大通りから一つ角を曲がると公園がある。
その公園の外周に並ぶ銀杏の木を眺めながら歩けるこの道は、あの夜、ヒーローさんに自宅までの道を覚えられまいと通った道だ。
もちろんこんな寒い日の夜中では、木を見ながら歩いたところで寒々しいだけなのでめったに通ることはない。
なのになぜ、今日はこの道を通っているかというと
数メートル後ろの背後に
誰かがずーっと付いて来ているから。
しかも、足音は、複数。
たまに聞こえる話し声の様子だと…たぶん、3人、居る。
…そういえば
この時間帯のコンビニって、いつもなら夜行性の学生さん達がたむろしてる時間帯だ。
入る時に居なかったから油断してたけど…
もしかして
もしかしなくても
私、尾けられてる、よね?
たぶん、そんなことするのって…あの3人、だよね?
私は震えながらも、背後にこの恐怖が伝わらないよう、コンビニの袋を握り締めてできるだけ足早に歩いた。
ほんとうは、携帯をポケットから出した時にあの日の着信履歴を一度見たけれど…
迷惑はかけたくなくて、履歴を閉じた。
念のために110番を押し、いざとなったらすぐかけられるようにしておく。
大丈夫。
この道を数メートル進んで公園の敷地を抜ければ交番がある。
そこにたどり着いたら、駐在さんに頼んで事情を話し、送ってもらおう。
交番にはあと2分もしないうちにたどり着くし、3人は数メートル離れてる。
携帯はしっかり手に持ってる。ボタンを押せばすぐかかる。
大丈夫。
大丈夫。
「…ギャハハハハ!!!」
「っ!」
不意に、後ろから大げさな笑い声が聞こえた。
あの日と同じ、ゲラゲラという下品な笑い声。
思わず、条件反射で駆け出した。
ダメだ。
怖い。
あと2分なんて耐えられない。
私の行動に対し「やべっ」と仲間を促すような声が遠くから聞こえて、バタバタといくつもの足音が追ってくるのが聞こえた。
嫌だ。怖い。
すぐそこの交番までがとてつもなく遠い。
必死に走ってるのに、今にも足がもつれそうで恐ろしい。
助けて
誰か
警察
…警察!
走りながら、握り締めた携帯のボタンを勢いよく押した。
けれど
携帯の画面は、いつの間にか発信画面から初期画面に戻っていて
私の頭はまた、絶望でパニックになる。
迫ってくる足音。
このままじゃ追いつかれる。
指が震えて数字がうまく押せない。
「や、だ、いやっ」
もう自分の足以外頼れるものはない。
前傾すぎて転がってしまいそうなほどに体を倒して走った。
交番の明かりは見えている。
あと数メートル
あと十数歩
ヒステリックに私を追う足音がすぐそこまで来ている。
追い詰められる恐怖が私を涙に追いやり、そのまま失速をさせず交番に吸い寄せる。
あと数歩
あと1歩
ああ、やっと
「助けっ……!!」
『ただいま巡回中。御用の方はこちらへ』
無人の、交番。
ポツンと置かれた電話の横に、悠長な注意書きが立てかけられて。
もう、そこまで足音が来ている。