When become a hero, now
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ヒーロー。
確かに今夜の彼にはふさわしい名前なのかもしれない。
チンピラに絡まれるなんて些細な事が本当に怖いと知った私にしてみれば充分ヒーローだ。
真っ暗な部屋に電気をつけ、静寂を嫌ってテレビの電源を入れた。
ケーブルテレビにチャンネルを合わせる。
あんな怖い事があったんじゃ、今夜はテレビを消しては寝られないかもしれない。
このチャンネルに朝まで付き合ってもらうしかないな、と苦笑いして、背を向けて着替え始めた。
テレビの中では黄色い歓声で誰かが出迎えられている。
中国語か韓国語か、とにかく日本語ではないアジア圏のナレーションは、なんだかヒーローさんに喋り方が似ていた。
「あの人どこの国の人だったんだろ」
一際黄色い歓声が上がり、尋常ではないその声に驚いた私はTシャツを頭からかぶって振り返る。
笑顔を振りまきお辞儀をしている5人が目に入った。
すごい速度で一人一人、自己紹介を始める。
「人気、すご、誰これ…」
3人目に差し掛かったところで、私は目を見張った。
大きな目、長いまつげ、髪の色こそ黒だが、白い肌にピンクの唇。
そして、字幕には
『ヒーロー』
「…は?え?」
同時に携帯が鳴った。
覗いたそこにも、字幕と同じ「ヒーロー」の文字。
「はい、もし、もし…」
「あー、…ヒーロー、ですけどぉ…はっはは、恥ずかしこれ…あのぉ、いま大丈夫ですか?」
「は、い…」
「えっと…名前、登録してなかったじゃないんですかぁー…なんて入れたらいいですか?」
「…え、あ、私の、ですか?」
動揺したままの私は簡単な質問にすら理解が追いつかない。
「はぁい…大丈夫ですか?まだあのぉ、怖いですか?」
「あ、だ、大丈夫、です、あの、なまえ…です…」
「なまえ…はいわかりました」
「あの!」
「はい?」
理解が追いつかないまま、それでも私は理解を求め、聞いた。
「ほんとの名前、もう一回、聞いていいですか…?」
笑い混じりの彼は、ハスキーな、テレビの中と全く同じ声で言った。
「ジェジュン…です」
ちょうどそう呼ばれて手を振る彼をテレビの中に見ながら、私はその場にへたりこんだ。
ヒーロー。
ヒーロー・ジェジュン。
電話の向こう、テレビとシンクロして笑う声。
言葉を失った私に、彼は言った。
「寝られないじゃないんですか?大丈夫?あー…呼んでくれたら行きますよー、ヒーローだから。はっはは…!」
ますます寝られなくする、心臓に悪いヒーローの出現。
私はテンポを失った心臓を押さえて
助けてください、とまた呟いた。
END
7/7ページ