When become a hero, now
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こんなに階が離れてて、会ったことってほんとにあるだろうか?
今までだってこのマンションで人に会うことは比較的少なかった。
…なんにしても、名前を聞かないことには番号も呼び出せない。
「あの、すいません、名前…何で登録してくれました?」
「あー…えっと、名前、入れないで、番号だけ…」
「あ、そうなんですか、えっとじゃあ…あ、これですか?」
未分類の電話帳の中から名無しの登録を見つけ、確認してもらう。
「そうそう」
「じゃああの、名前なんて入れたらいいですか?」
「ジェジュンていうですけど…」
「じ、え、じぇ?」
聞きなれない響きの名前に戸惑ってしまった。
カタコトなのはそのせいだというのも分かったが、うまく聞き取れず、なんと入れていいか分からない。
二人で発音を確認しあっても疎通がとれないまま、エレベーターが5階を過ぎる。
「あの、ごめんなさい、とりあえずニックネームでもいいんですけど」
「ニックネィム、…あー…はっはは」
言いにくそうに口を一度ふさいで、突然笑う。
よほど面白いニックネームなんだろうか。
さらに聞き取りにくいような発音のものだったらどうしよう。
窓は7階を通り過ぎた。
「名前より難しいですか?」
「んー、簡単です」
ポン。
小気味いい音で8階に止まる。
「…あ、ごめんなさい着いちゃった。あの、じゃあニックネームで…」
「ヒーロー」
「え」
「はっはは?また電話しますね?」
「え、あのほんとに」
「おやすみなさーい」
手で口をふさいで笑った後、綺麗な笑顔のままで彼はエレベーターに連れられて手を振り、去った。
取り残された私は、名無しの登録を見つめ、立ち尽くす。
「…ヒーロー?」
気を利かせた冗談のつもりだろうか。
「…変なあだな…」
私は言われたとおりに名前を打ち込み、携帯を閉じて部屋に入った。