When become a hero, now
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その後、倒れたままの男を街灯の下に引きずり、無理やり起こしたその目の前に写メに撮った学生証をちらつかせて、彼はカタコトで言った。
「次ぃ、同じことしったらぁ、ほんっとにケーサツ行くから」
周りに仲間の姿を探したあと 自分の味方が誰も居ないことを確認した男は
「はい…」
と意気消沈して頷き、学生証を受け取り走り去った。
それを見送りながら男に見せていた私の携帯を閉じ、隣に立つ私に彼が携帯を返してくれた。
その時、初めて気が付いたことがある。
街灯に浮かび上がる白い肌、金の髪。
頬に影を落とす長いまつげ。
乱れたニットの帽子を脱ぎ、髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜる綺麗な手と
薄く開いたピンクの唇。
「……あの、……えっと、この近所の人、ですよね、会ったこと…あり、ます…よね?」
「…たぶんー…あ、家どっこですか?送りますよ…」
「あ、すいません」
いつ見たか分からないけど、見覚えがある顔。
でもこんな綺麗な顔立ちを忘れることってあるだろうか?
めったにこんな顔にお目にかかることは日常無いだろう。
もちろんTVの中は別として。
そこまで脳内で彼を絶賛しながらも、少しだけ遠回りしてマンションまでを帰ってゆく。
いくら恩人でも、美男子でも。
見知らぬ男性に自宅までの最短ルートを覚えられるのはどうしても嫌だった。
「…こんな道、あるんだあ…」
「あー…そうですね…」
彼が回りを見渡しながら付いてくる。
時間を確認しようと携帯を開いた。
さっき返してもらったこの携帯には、同じ男にまた絡まれた時に警察に説明するため、と彼の番号を登録してもらっている。
けれどよくよく考えれば彼の名前を知らないのにどうやって番号を探せばいいんだろう。
名前を聞こう、そう決めるのと同時、マンションの前に着き、振り返った。
「あの、ありがとうございました、それで、名前…」
「え、ここ?家ぇ?」
「あ、はい…」
「………あー…っははは…っ?」
「あの、名前を…ちょ、ちょっと?」
携帯を開いて待つ私の横を通り過ぎ、薄ら笑いの彼がオートロックのパネルに進む。
お礼に部屋に入れろとでも言うのだろうか。
さっきはヒーローだったとはいえ、お礼も必要だとはいえ
…今の私にそれは無理だ。
男ってみんなこうなんだろうか。
少し絶望しているとパネルの向こうで自動ドアが開く。
「え」
「はい、入って」
「入って…って、え?」
彼の手には、私がカバンに持っているのと同じタイプの鍵。
「あの、ここ、…住んでるんですか?」
「そーなんですよ、ほんっと偶然…」
「それで…会ったことあると思った…」
「…………たぶん…ははっ」
歯切れの悪い返事をごまかすように笑って、並んだエレベーターの一つに乗り込んだ彼は15階を押した。
私は8階を押す。