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…それでもお茶を入れなおしてくれるだけましか。
言葉だって、少ない代わりにとても上手になっている。
昔より言葉が少ないという事は、昔より信頼も増しているということだ。
そのぶん照れもあるのだから、そう考えれば彼が心の内を晒した歌詞を見せないのだって可愛らしい。
あの頃より大人になったようでいて、そんなところはまだまだ子供なのだ。
そう自分に言い聞かせ、いろいろ諦めることになんとか成功した私は また腕を枕にして突っ伏した。
「ほんとによく寝る人だなあ…」
「すいません…」
「付き合い始めた日も寝てたしなあ…」
「いやあれはあんなタイミングで言ったチャンミンが悪い」
「ああ、そうですねーあの時は…」
「うん…あの時は、ほんっと疲れ」
「お酒入ってましたもんね」
ん?お酒?
チャンミンと逆側に向けていた顔を腕の上で転がし、チャンミンの方へ向けた。
ヤカンからの湯気で表情はよく見えない。
「お酒…飲んでないよ。ご飯も食べずに寝たんだよ?呑む暇なんか」
「飲みましたよ、少しだけど」
「飲んでないって。まっすぐ帰ってきたじゃん」
「いやだから、家で」
「飲んでないって、あの日はホットミルクしか」
「だからあのホットミルクに」
「え?」
「ブランデー…」
「!?」
「…だってあなた、職場離れようかっていうのに」
「なんの話!?」
「会えなくなるかもしれないのにギリギリまで白状しないから」
「なにをっ」
「好きだったでしょ?僕のこと」
「え、」
「でもなんかガンとして言わない様子だったから…お酒入ったら素直に言うかと…」
「……………え……」
言葉を失った私に催促をするでもなく、ヤカンに呼ばれて火を止めたチャンミンがポットにお湯を注ぐ。
ほどなく湯気が晴れてようやく見た顔は、初めて家に来た時と同じ表情をしていた。
それは、「予定通り」というあの顔。
「…今度はお酒なんて入れてませんから、寝ないでくださいね?」
ポットから立ち上る温かな湯気の向こう、大人になったチャンミンの笑顔。
私は温かな紅茶の香りに
あの日のミルクと同じくらい、酔っ払ったような眩暈を覚えるのだった。
END
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