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疲れのせいか、喉から全身に温かさが染み渡っていく。
膝を抱えた私の指にひっかかっている空になったマグを、チャンミンが私の手からとり、ソファの傍に面しているチェストの上に置いてくれた。
『…あーありがと、うーわーやっばいくらい眠い…』
『明日休みでよかったんですね?』
『ほんと…こんな眠くなると思わなかった…』
お風呂入らなきゃ、ご飯も食べたい、顔も洗いたい、そんな意識は怒涛に押し寄せてくるのに、体は熱にほどけたように力が抜けて眠くなっていく。
もうほぼ確かな意識ではない私の顔を、隣からチャンミンが覗きこむ気配がする。
笑いを噛み殺す喉の音。
どうせみっともない姿だとでも思っているのだ。
抱えた膝から急に手が離され、支えを失った体が前のめりになる。
重心がおぼつかない浮遊感で反射的に顔を上げ、足を下ろした。
おっと、とどこか分からない距離から彼の声がして、背もたれに付けたはずの背中に温かい感触。
意外なほどガッシリ固い感触のそれは チャンミンの腕だった。
『危ないなーもおー…』
自分が私から重心を奪ったくせに、苦情を投げかける声はやはり喉元で笑っている。
私の目の前には色のあやふやな景色と彼がそこに居るらしい気配があるだけなので、どうやら自分の目が開いてない事がわかる。
会話ももうできそうにないのに、彼はその状態から喋りかけてきた。
『なまえさん?』
唸り声だけで返事をする私の頬をぺち、と叩く。
『…なまえさーん、お風呂は?』
『………』
『……なまえ?』
なに呼び捨ててるんだ、と思うのと同時、私は胸がじんわり熱くなるのを感じた。
心の中は、名前を呼ばれたことに喜んでいるのだ。
彼の声が紡ぐ私の名前に、距離を表す敬称が無いことに喜んでいる。
けれどもう会話など出来ない。
「うん」か「ううん」が精一杯だ。
意識はもう眠りの手前まで来ている。
『なまえ…聞いてますか?』
『…んー…』
『…ねえ、寝る前に一つだけ、聞きたいんですけど…』
もう一度、うん、の意味合いで喉を鳴らした。
『僕のこと、好きですよね?』
もう一度、同じように喉を鳴らす。
鳴らしてから、うん?と思ったけれど、もうほぼ眠りの中だったので夢か現実か分からなくて、そのまま撤回せずにおいた。
私の背中を支える腕が一つ増える。
それが、私とチャンミンが恋人になった夜の 最後の記憶だった。