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『ミルクあっためてー』
冷蔵庫の近くに居たチャンミンに声をかけたのは、何日も続いた事務所の移転が終わってクタクタになって帰ってきた夜。
異動の初日を2日後に控えて、それなりに緊張もピークに達していた。
途中で合流してついて帰ってきたチャンミンを部屋に入れ、私は寝室で着替えていた。
『ミルク入ったんですけど…』
『はーいありがと』
リビングの声に返事をして、髪を結びながらドアを引く。
『ぅわっ』
『っと。危ないですよー』
『なに、あぶなっ』
出ようとした部屋の目の前に、湯気の立つマグを二つもったチャンミンが居た。
『なまえさん、疲れてるんじゃないかなーと思って…』
『あ、持ってきてくれたの、ありがと』
でもびっくりした、と付け加えると、私の頭を通り過ぎる目線が何かを見ている。
『あのソファ…』
『ん?あー、もらったの。事務所、新しいとこ行ったらもう使わないからって』
ベッドの向こうに置かれた二人掛けの小さなソファ。
もともとは誰かが自宅の引越で不用品になったからと、事務所の休憩室に運んできたものだ。
私はこのソファがお気に入りで、休憩室に行く時は決まってこのソファに座っていた。
『まだ使えるし、もったいないからね』
『あれ、僕お気に入りでしたよ…もう新しいとこには無いんですか…』
チャンミンもこれ気に入ってたのか。
あまりに寂しげに言うのでマグを一つ受け取って、座る?と聞いた。
聞かなきゃいけないような顔だったのだ。
初めて家に来た日の泣きそうな顔にも少し似ていた。
『はいっ』
チャンミンは返事をするなり、ずかっと寝室に入り込んで、ソファにどんと座る。
そしてマグを持っていない方の手でつけていたマフラーを外して肘掛に置き、手招きをして私を隣に呼んだ。
マグを口に近づけながら、私もチャンミンの隣に腰掛ける。
『はー疲れたー』
『絶対あたしの方が疲れた』
『僕だって疲れてますよー』
『いーやあたしのが疲れた。あたしだけだよ?事務所の移転手伝ったの』
大げさなため息をつくチャンミンにそう言い返すと、あー、お疲れ様です、と笑われた。
引越業者に指示を出すだけじゃなく、ちょこちょこ運ぶのも手伝ったのでほんとうにクタクタだ。
『ああーお風呂入ってからにすればよかったかも!』
『ミルク?』
『うん、めっちゃくちゃ眠い』
『ははあ』
『いやまじで眠い。でもおいしい』
マグの中身を一気に空にして、温まった体をソファの上で抱えた。