6, 8, 12
夢小説設定
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目的地に着くとなまえは外の景色を確かめ、一度おれの横顔を見た。
そして、うつむいて謝る。
「…ごめんね」
「ううん…」
おれはうまく答えられず、唇を噛み締めた。
「じゃあ…また…」
「…なまえ」
「ん?」
「………大丈夫?」
「……ふふ」
苦く笑う声。
おれの大丈夫という言葉はふわふわと浮かんで霧散した。
車を出るとやっぱり寒くて、歩道に下りたなまえはまた腕を組む。
「…早く、寝なきゃだめだよ、今日」
「ジェジュンもね…さむっ」
「ほら」
おれが手を振るとなまえも頷いて歩き出す。
後ろ姿がにじみかけて、今度はおれがうつむいた。
「…ジェジュン」
「…ん?」
「あの、さ」
「………」
「今日、寂しくて電話したの」
「………うん」
「でも、かかってきたとき…私、」
「わかってる」
「………」
「………」
「そっか、ありがと。…ごめんね?」
頷いて、今度こそ後姿を見送った。
真夜中に響く足音。
遠ざかるその音が聞こえなくなるまでおれはそこにいて、何も聞こえなくなったとき、ようやく車に逃げ込んだ。
車の中では一巡してまたあの曲が帰ってきていたけれど
帰ってきてほしいのはそんなものじゃない。
言いたかったのはそんな言葉じゃない。
おれはまた、鳴らない電話を手にした。
見つめても
見つめても
祈っても鳴らない
やがて日付がかわったことを示して、時計がブラックアウトする。
真っ暗な画面に映り込むおれの顔。
「…愛してる」
独り言の滑稽な告白を唇から落としたおれは
6ヶ月と8日、12時間前と、まったく同じ顔をしていた。
END
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