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「あーこれ…懐かしいねー…選曲が…」
「…………うん」
何度もこの車で聞いた曲をなまえが鼻歌でなぞる。
会話はなくなり、ただ、ただ声だけが響く。
二人で聞いていた歌が何曲も巡っていく。
「あいかわらず…へったくそだなぁーもー…」
「鼻歌って難しいよねー」
「なに開き直ってんのぉ…なまえは歌詞があっても下手でっしょお…」
「だって英語じゃんこれ、あたし日本人だもん」
「おれ韓国人だよ?」
「はいはい上手上手、ジェジュンはすごい」
心ない拍手に言葉だけで異を唱えて、でもおれの顔は笑っている。
なまえの横顔。
手にした携帯を見つめて、閉じた。
さっきから何度も時間を気にするしぐさにはとうに気付いている。
「…ほんとは明日早い?」
「………んーん…」
「帰る?」
「ううん、大丈夫」
また、窓の外を見つめた。
携帯は両手に握り締め、膝の上に大人しく乗せている。
うつろなしぐさ。
遠くを見る目。
なまえの姿は、このまま奪い去りたいと何度も思わせた。
言ってしまおうか。
今。
なまえが誰といても関係ない。
このまま。
奪ってしまえたら
「……なまえ」
「ん?…あ、この曲」
名前を呼びかけたところで曲が変わった。
その音は、嫌でもおれの気持ちを連れていく。
「…これ、まだ好き?」
「んー、うん……」
おれの問いかけに、なまえは上の空で答えた。
携帯を握り締める手がぎゅうと小さくなる。
おれの胸は切なさに締め付けられて、細いなまえの手を今すぐ掴みたいと叫ぶ。
目の前の信号が初めて赤になった。
止まった車。
おれはやっと唇の裏から言葉を取り出し、手を伸ばしかけて
やめた。