lovable first
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私は震える体を椅子から離して、ひざまづいてカバンを拾った。
震えで椅子から落ちたのを知られたくなかった。
カバンを持って立ち上がる。
支えを求めて、目の前にあった隣の列の机に手をかけた。
窓際のユチョンを見る。
意を決して見たのだ。カバンを持つ手に力もこもる。
ユチョンは嘘のように眩しく輝く中庭の緑を背にたたえて、柔らかな髪を土曜の午後の日差しに照らさせたまま
まっすぐ 私を見ていた。
その目は暗い。
暗いけれど、うっかり見つめたら心ごと惹かれそうになる光を詰め込んだ目だった。
「なまえってほんとー…」
強情、と笑った口が大人びた笑みをたたえた。
うっかりしていた。
私、この人のこと好きなんだった。
見てはだめだった。
こんな暗い、目。
私の考えはもう全部、空気すら隙間に入れないほど間近に見た、その目の光に吸い込まれていた。
唇からもれる息が熱い。
ユチョンの唇は冷たいのに。
こんなに 冷たいのに。
「ふ」
「…、なに、」
「あっつい くち」
ユチョンが私の唇のすぐ傍で笑う。
それがほんとに
ほんとにおかしそうな、無垢な子供の笑みだったから
私は明るい教室も
輝く緑も
真っ白なカッターシャツさえ
全て嘘じゃないかと思って
それきり目を閉じた。
…今でも
瞼を閉じれば 真っ暗な目の中、思い出す初めてのキス。
ユチョン。
愛すべき笑顔をたたえた、あなたは私の
今でも忘れられない 初めてのひと。
END
4/4ページ