lovable first
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
急にユチョンが「あ」と囁いて笑みを消す。
こそこそと、私の椅子と壁の間にしゃがんで隠れた。
私がそれを振り返るより早く、廊下側のドアがガラっと音を立てて開く。
「…………」
隣のクラスの女の子だ。
名前は忘れたけど、よくうちの教室で見かける。
お昼のたびにお弁当を持ってうちのクラスの子の席に食べに来ていた。
無言のままキョロ、と見渡して、窓際に座る私を見て口を開きかけたあと、何事もなかったようにそれを中止して出て行った。
「…隠れてんの?ユチョン」
「えへ」
「逃げてんの?」
「うふふ」
ごまかす時は可愛く。
それって誰に教わったの?
私は小さくため息をついて振り返った。
「あの子なんていう子だっけ」
「えっと、なんだっけ、さっちゃん?」
「さっちゃん」
ふうん、と私は一度名前を繰り返して、廊下に向かって大きく息を吸った。
次の行動を察知したユチョンが慌てて立ち上がる。
私の口から出かけた「さっちゃーん」という叫びはユチョンの手で後ろからふさがれた。
「ちょっちょっ、だめ、だーめ」
怖いなあもう、とユチョンもため息をつく。
「……逃げてんじゃん」
背中の方に頭をもたげてユチョンの顔を逆さまに見る。
塞がれたまま、くぐもった声で言った。
実はまた胸を押さえて精一杯強がっている事は知られないよう、じっとりとした目つきを作った。
「だーってえ…しつこいんだもんあのこ」
知らぬ間に、ユチョンはあのこにずっと追っかけられていたらしい。
先週、彼女とこの教室で二人きりになったとユチョンが話した。
私の知らない放課後。
私の知らないユチョン。
「…なんもしてないよ?」
「聞いてないよ?」
にこ、と音をたてたつもりだけど、ほんとに笑えてただろうか。
ユチョンの手を顔から外させて、私は机の上のカバンに手を伸ばす。
こういうとき、どうして私はユチョンの彼女じゃないんだろうと思う。
友達なんて、なんの権利もない。
簡単に追われないでよ。
二人っきりになんてならないで。
他の子の顔見て逃げたりなんて
それすらもう妬ましい私は
………
これ以上感情が醜くなるのが嫌で、カバンを引き寄せて立ち上がろうとした。
前に重心を傾けると急に背中が重くなる。