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前に付き合っていた彼女は、同じ事務所の練習生だった。
同じ時期に事務所に入った僕達はすぐに意気投合した。
夢を追う彼女は輝いていて、僕もそう見えると言ってくれた彼女の手を取った時は、未来がとても明るく見えた。
同じだけの努力をして、同じだけのチャンスがあったのに…
一度、ケガでチャンスを逃した彼女はなかなか芽が出ず、僕達の日本進出が決まった頃にモメて別れた。
韓国に帰れば顔を合わせるし、連絡を切ったわけではない。
夢を通じて手を取り合ったはずの僕達に訪れた皮肉な別れに、僕は深く傷ついたまま日本に来た。
そしてなまえと付き合い始めたのは、日本でデビューして一年経った頃。
僕達5人のことも知らない、芸能界に興味があるわけでもない、ただの日本人のなまえ。
けれどそこに本当に安心した。
僕の不自由な日本語を根気よく聞き取ろうと努力してくれた優しさにも、いつも変わらず待っていてくれるけなげさにも。
忙しさでなかなか会えない僕に合鍵を渡して、「待ってるね」と告げた彼女のはにかんだ笑顔。
今だって思い出せば愛しさが募るほどに、その言葉に幸せを感じた。
合鍵を受け取って「ありがとう」と答えた時には、本当に安らげる場所が見つかったと、最後の女性だと、思っていた。
韓国に帰るたび寂しい思いをさせていたのに
離れている間の不安も知っていたつもりだったのに
僕は強くなまえを愛していたから、その気持ちはもちろん通じていると勝手に思い込んでいた。
だから、夢を諦めそうな前の彼女に泣きつかれて、何度も何度も彼女と会った。
やましい事はしていないと誓って言える。
けれどそんな事はなまえには関係ない。
当たり前だ。
同じ事務所に前の彼女がいる、悩んでいるから相談をたまに聞いている。
言わなければいいのに律儀に報告した僕に、なまえは初めて「やめて」と言った。
ワガママなんて言った事の無いなまえの、初めての強い自己主張だった。
なのに僕は軽く「わかった」と答えただけで、結局言うとおりにはできなかった。
理不尽だとも言えるけれど、確かに同じ事をなまえがしていれば僕は激怒していただろう。
弱っている状態の元恋人に会うなんて無防備すぎる、と叱っただろう。
…そりゃなまえだって、こんな自分勝手な僕との関係に疲れないわけもない。