I spill milk
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薄暗い部屋の中、携帯を開いて時計を見る。
PM 12:21
ユノが部屋を出ていってから、まだ5分しか経っていない。
さっき時計を見てからは1分しか経っていない。
その前に時計を見た時からでも2分しか。
…今日の俺の体内時計は1分を正確に刻んでいるらしい。
「ユチョーン…」
ジェジュンが、ユノの言うところのシワクチャな声で俺を呼んだ。
「なに?」
「パカパカうるさいー…」
「あ、ごめん」
携帯を慌てて閉じる。
携帯の開閉音が睡眠の邪魔になっていたらしい。
そのまま携帯を足元に転がる自分のカバンにしまった。
横になるジェジュンの隣に静かに腰をおろす。
ふう、とため息をついた。
5分か。
もうそろそろ交代して俺がなまえのところへ行こうか。
いや、まだ早いか。
ユノはずっとジェジュンを見てくれていたし、なまえを見張る以前に一息ついてもいいだろう。
そういえばユノは事務所に連絡を入れたんだろうか。
俺が入れた方が…いや、携帯は後にしよう。ジェジュンの邪魔になる。
「…ユチョン」
「んっ?なにっ?」
「座って立って、ジャマ…」
「あ?あ、ごめん!」
思考に合わせて座ったり立ったりしてしまっていたらしい。
また慌てて、離れようとするとジェジュンが服を引っ張る。
「気になる?」
「え」
「なまえ」
「え」
「………」
その顔は恐らく、迷惑だからうんと言え、という顔だった。
熱のせいで不快感が増幅されているのか、いつもより表情が怖い。
「…うん…」
「はあー、じゃ行けばいいじゃーん…」
「ジェジュンといないと」
「うるさかったら寝れないじゃん」
「すいません」
もっともなジェジュンの答えに、代わりに誰か呼ぼうかと聞くと、ユノ、と即答だった。
もう一人の選択肢はジュンスなので、当然ともいえる。
「ユノね…」
けど俺はなまえとユノを引き離せることに少し安堵して笑顔になる。
さっきは卑怯な作戦で行かせたのに、なんて根性の無い俺。
苦笑いして今度こそ立ち上がろうとするが、またジェジュンに、今度は腕の肉ごと引っ張られた。
「痛い痛い、なにぃ」
「ユチョン、なまえ好きなの?」
「んっ?」
唐突なジェジュンの問いかけに口をつぐんだまま声を出してしまう。
恐らく、今の一連のやりとりと俺の表情で推測したのに違いないが…。
カゼをひいてる時までなぜそんなに鋭いのだろう。
俺の表情をよく見ていなければ分からないだろうに。
それにしても、さっきに比べキラキラした目で見ている。
面白がっているのか。
「好きなんだー、あー好きなんだ、だからユノ呼びたいんだー」
「しー、しー!」
子供のようにはやしたてるので静かにしろと促すが聞いてはくれない。
「なんで告白しないのお~」
「しー!」
「なまえ、彼氏いる?」
「ちが、ちがう」
「好きな人?」
「ち………」
「いーじゃん取っちゃえー」
「ちがっユ…」
思わず言いかけて、黙ってしまった。
ジェジュンが「あら」という顔になる。
「…ユ?」
「……」
慌てて手を振り払う。
できるだけ平静を装って
「ユノ呼ぶんでしょ?」
と苦し紛れの台詞で部屋を出る時まで、ジェジュンの顔は見ないようにした。
この期に及んで表情を読み取られるのだけは避けようと努めてみたのだ。
…遅かったような、気もするが。