I spill milk
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「…俺のだから」
「…………っはははは!!!!!」
このくだりで、ジェジュンヒョンは見事にその場を再現して笑いを誘った。
ユノヒョンも珍しくみんなと一緒に笑っている。
「すっごい急いで、部屋出て行って…!!」
ジェジュンヒョンが笑いながら加えたその言葉でさらにジュンスヒョンが笑った。
「僕がジェジュンと立ってるの見て真っ赤なってたねー」
ユノヒョンがニヤニヤと言うので、悪いと思いつつ僕も笑ってしまう。
「ユノ、いいですか!?そういう人だと思われましたよ!?」
「あーユチョンのためだからー」
ジュンスヒョンの質問にニヤニヤともっともらしく答える。
ユノヒョンはジェジュンヒョンが何をしようとしていたか知っていたらしい。
彼女を部屋に送り込む協力までして、むしろまんざらでもない様子だ。
「ユチョン、ユノのせいで言えないからー、なまえがユノに行かないようにしないとー」
ジェジュンヒョンももっともらしく語る。
面白がっているのは明白だ。
しかし自分の想いがバラされたと思っているユチョニヒョンは、可哀想に今ごろ背水の陣に臨んでいるのだろう。
こんなに皆に笑われてるとも知らずに。
気の毒な人だ。
そう思いつつ、気づけば口が笑ってしまう。
いけないいけないと買ってきた本を開いた。
開けた本の延長線上で玄関も開く。
ユチョニヒョンがうなだれて帰ってきたようだ。
即座に群がる3人に囲まれるユチョニヒョンから目を離し、笑いを噛み殺してページを何枚かめくった。
「どうだった!?言った!?」
「……」
「ユチョン!?言っちゃった!?」
「……うん」
「あー言っちゃったんだーははは!」
「…なに笑っ…ジェジュンのせいで言うしかなかったんでしょ!!」
「うぉー、怖いー」
「あー…言っちゃったんだー…」
「…………あ~!!!」
3人に囲まれてユチョニヒョンがやけのように嘆く。
ジュンスヒョンはユチョニヒョンを指差して笑っていた。
可哀想に。
言っちゃったのか。
どうやら、ジェジュンヒョンが彼女に何を言ったかも彼女から聞かされてしまったらしい。
いけないけないまた僕も笑ってしまってる。
本を顔の前に持ってきて隠した。
ユチョニヒョンを肴に酒盛りのように騒ぎ立てる3人の後ろを通り、そのままソファを立って部屋へ入った。
僕は声を上げて笑わないように必死だ。
本を手にしたままデスクの前の椅子に座った。
そして、ひとしきりユチョニヒョンをネタに静かに笑う。
なんて可哀想な人だろう。
でもあのジェジュンヒョンの楽しみようといったら。
「…ふ、」
「チャミナあー!!」
声を上げかけたところで、後ろのドアが開いてユチョニヒョンが入ってくる。
3人を置き去りに僕の足元まで逃げてきたようだ。
僕はといえば慌てて笑いを隠して本をまた顔の前へ。
「チャンミン~もう、もうどうしよーーー」
どうしようもないです。
そんな台詞言おうものなら笑いそうで、心の中でだけ即答する。
でも何か言葉をかけてあげないといけないのだろう。
なにかこの状況に耐えるための言葉を。
即座に思いついた言葉を探してページをめくる。
「こぼした水」とハングルで書かれた欄の、日本語表記で指を止めた。
ふう、と一息ついてゆっくり口を開く。
「…ユチョン、いいですか」
「なに…チャンミンなに読んでんの…」
ユチョニヒョンが顔を上げて背表紙を見ている。
構わずに日本語表記を読み上げた。
「覆水盆に返らず」
「……………」
「ですよ」
「……………」
「……………」
「チャンミン…この本…」
「日韓ことわざ辞典です」
ユチョニヒョンはゆっくり立ち上がり、開いているページを覗くと表情を変えず出て行った。
ドアを閉めたリビングで3人が拍手する音が聞こえる。
僕は今度こそ笑いを止められず、大声で笑った。
リビングに聞こえていたかもしれないけれど、やってしまったものは仕方が無い。
僕は役に立つ本を大事に本棚にしまった。
END