I spill milk
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ほんというと 早く自分のものにしたくて仕方ない
勇気が出ない俺の心をずっと捉えてやまないひと
彼女の名前はなまえ
もう、半年をすぎようとしている、俺の長い片思いの相手。
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I spill milk
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久々に休みになった日の午前中。
珍しく早く返したメールの後に電話がかかってくる。
『おはよー、もしかしてユチョン今日休み?』
ディスプレイを見るまでもなく、その声はたった今までのメールの相手。
なまえだ。
「おはよー、休みっすよ?」
『やっぱり!返事早かったしそんな気してた!』
「違うかもしれないのにー、仕事だったらどうすんの~」
仕事だったら謝ってた、と潔い返事に笑ってしまった。
いや、電話をかけてきた時点で、奔放な彼女の様子に既に笑っていたのだけど。
笑いが収まったところで、それで?と電話をかけてきた用件を促す。
その間に俺は、寝ているジェジュンを起こさないよう自分の部屋を出て洗面台へ向かった。
今から出て来いと言うだろうことが分かっていたからだ。
『お昼食べにいこうよ!こないだ前通ったとこ!ユチョンがいいねーって言ってたとこ!』
「あーいいねえ~」
『行く?行く?じゃあ迎えに行くよ!電車だとちょっと遠いし、車のがいいでしょ?』
ここで一瞬俺は立ち止まった。
部屋から洗面台へ向かう途中のリビングで。
それは困る、と思ったのだ。
「えー…悪いでしょー」
『あ、もしかして今日そっち車ある日?』
「マネジャーさん居ないから無いと思うけど…」
『じゃあやっぱ迎えに行くよ』
彼女は付け加えて、襲わないから、と笑った。
数秒かかってその冗談を理解して笑ったけれど、そんなことが心配なわけじゃ当然ない。
けれどもう一つの部屋からユノがリビングに出てきたので、俺は慌てて「わかった」と答えた。
早く用件を済ませて切ろう。
「あーユチョンおはよ~」
しかし俺の思惑に反して、この男は空気も読まずに挨拶してきた。
さらに「マネジャさんは?」と続ける。
電話している事に気づいていないらしい。
「いないよ、今電話してるから」
「ああ、ごめん」
『!?それユノ?』
「ん?ちがうちがうジュンスジュンス」
わざわざ電話をアピールして遠ざけるとユノはそそくさと洗面台に向かったが
なまえに咄嗟についた嘘が聞こえたのか振り返って
「ジュンスですよ~ウキャンキャン!」
と大きくジュンスの笑い声を真似て去っていった。
俺の「ジュンス」という発言で冗談をフられたと受け取った彼なりのサービスだ。
なぜ今そこの空気を読んだ。
アンタが読むべき空気はそこの空気じゃない。
『ほらやっぱりユノじゃん!』
なまえは電話の向こうで嬉しそうに笑っている。
そして、恐らく彼女はこう言うのだ。
『…ユノも休み?誘ってみる?』
やっぱり。
ほら来た。
これだよ。
これが、俺が半年も片思いしている原因。
どうも彼女はあの、男らしくも空気を読めない男が好きらしい。
以前この宿舎に迎えに来てもらった時、他の4人に会わせた事を思い出す。
ユノと握手する時だけやたら緊張していた。
そして手を離したあと、しばらく嬉しそうに両手を組んで感触を抱いているようだった。
「………」
俺はその記憶にうんざりしながらリビングのソファに座る。
どうせ今 洗面台に行ったってユノが使っているのだ。
「…どうかな~…ユノ今起きたから…」
『あたしも今から用意するから、とりあえず聞いてみようよ』
どう聞いても満面の笑みの声だ。
嬉しそうに…でもそういう分かりやすい感情表現に俺は惹かれてるんだろう。
奔放で、素直で、ストレートで。
そんな彼女に愛される小さな夢を、俺は半年間捨てられない。
ぐったりソファの背もたれに体を預けて俺は答えた。
「…わかった」
『ありがと!じゃあそっち着いたら連絡するね~』
「はあい」
ありがと、ともう一度言ってなまえからの電話は切れた。
嬉しいことをしてもらったらお礼を忘れない。
そういう彼女だから複雑になってしまう。
喜びを与えられたことと、その喜びの理由が俺ではない悔しさと不満と。
「もお~……」
ソファの上で体を折り曲げて、感情ごとグチャグチャっと混ざったあと
やっぱ好きだなあ、と思った。
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