その男、煉獄杏寿郎【上】
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食べ始めると、
煉獄は、一口食べては
「うまい!」
「うまい!」
と繰り返していた。
それはまるで、作ってくれた千寿郎に感謝を述べている様に見えた。
そして、次々へと口に運び、とても良く食べる人だとわかった。
その感謝の言葉、よく食べる姿。素っ頓狂な質問をする姿。時折見せる真っ直ぐな熱い眼差し。
楓は煉獄の言動全てに愛おしさを感じている。
すっかり魅力されていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
食事を終え、楓が重箱を片付けていると、落ち着いた声で煉獄は言った。
「楓。少し良いか。」
楓「はい。」
「住む場所は決まったか。」
単刀直入な煉獄のその問いに、楓は答えられなかった。まだ結論は出ていなかった。
家族を考えると、あの夜に起こった出来事が鮮明に浮かぶ。
震える身体を、あの恐怖を、必死に抑える。
声が漏れ、自身抱きしめ、身を縮こませる。
涙が零れないよう、必死に、全ての感情を抑える。
ふと全身が包まれた。それはとても熱く、優しく、知っている温もり。
ふわりと白い絹の羽織の裾が畳に落ちる。
煉獄が、小さく身体を丸め、震えている楓を優しく、庇うように抱きしめていた。
必死に堪えていた涙が溢れ出る。とめどなく溢れ、嗚咽も漏れ出る。
「大丈夫だ。俺がいる。」
少し力を込め、楓を抱きしめる。
楓の心の中であの言葉が呪いのように木霊する。
(「泣いていても始まらない!時は寄り添い泣いてはくれない!前を向け!少年!」)
抑えても抑えても、抑えきれず。
堰を切ったように泣き出す。声も押さえず、子供の様に泣きじゃくる。
祖父母を想い、両親を想い、兄弟を想う。
ぼろぼろと大粒の涙は溢れて止まらない。
「俺が楓を守る。」
「幾らでも俺の中で泣いていい。」
「すまなかった。」
その言葉達は楓の心に刺さった棘を優しく、丁寧に抜いていく。
「大丈夫だ。」
まだ少し痛む心に蓋をして、楓は身を委ねていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈煉獄に身を委ね、どれ程の時間が流れたのかわからない。
庇うように抱きしめられている楓の身体は熱気を帯びていた。
自分の熱気なのか、煉獄の熱気なのか。二人共、ただただお互いの熱を感じていた。
楓は、いつの間にか泣き止んでいた。寝ていた訳ではない。
溢れ出る感情を隠さず、煉獄へとぶつけ、また煉獄もそれを全て受け止めてくれていた。
楓「煉獄…さま…。」
憂いを帯びた声で呼ぶ。
「杏寿郎だ。」
簡潔に言う。
楓は煉獄の意図は少しづつ理解出来ているようだ。
楓「杏寿…ろう……さま」
「杏寿郎だ。」
楓「杏寿郎…さん…。」
煉獄の言葉が続かない。
二人の中で折り合いがついたのだろう。
突然涼しく感じた。それと同時に力強く身体が動かされた。
どうやったのかはわからない。
目の前には熱気を帯びた煉獄が、正座をした楓の両肩に手を置いている。
「決まりだな!!」
屋敷中響き渡るその声は、楓をまた驚かせた。
そこからの煉獄の手際の良さに目を離せなかった。
聞こえた声に駆けつけた胡蝶に、喋る鴉には手紙を、どんどんと進めている。
楓は目の前で起こっている事は、これっぽっちもわからず、正座をしている。
その時、胡蝶が近づき、言う。
「なんだか大変な事になっちゃいましたね。大丈夫ですか?」
「楓さんはそれで良いのですか?」
楓は、やはりわからなかった。ただ困惑もあったが、煉獄が言うなら間違うことは無いだろう、と漠然と信じていた。
楓「はい…。よくわかりませんが…、大丈夫…だと思います…。」
「そうですか。わかりました。あの家に嫁ぐのは大変だと思いますが、楓さんがそういうのでしたら止めませんよ。」
楓「…………へ…??」
クスクスと胡蝶は笑い、楓に身の回りの品を贈り、続けて促す。
「さぁ、そのままの格好では炎柱様の雷が落ちてしまいそうですよ。着替えましょう。」
楓「…………えぇ??……」
されるがままに着替え、整えられ、礼もそこそこに、あっという間に馬車に乗せられた。
