レウィシアとルーチェ
ぼくにとって、レウィシア王女はお姉ちゃんだ。
いつでもぼくの事、たくさん可愛がってくれる。
いつでもぼくを抱きしめてくれる。
お姉ちゃんがいるおかげで、ぼくは生きていられる。
ある日の夜、ルーチェはレウィシアと同じベッドにいた。シャンプーと石鹸、そして花の香りに満ちたレウィシアの匂い。お姫様と呼ぶに相応しい癒される匂いに満ちていた。
「ルーチェ……可愛い……」
レウィシアはルーチェを愛おしく抱きしめる。ルーチェはレウィシアの大きな胸に顔を埋め、匂いと共にとても暖かい温もりを感じる。レウィシアの温もりは、心地よい暖かさに満ちている。寒さに凍えた身体を暖めるだけではなく、深く傷付いた心を暖かさで包み込んでいたわる温もりであった。
「お姉ちゃん……大好き……」
ルーチェはレウィシアの胸の中でたくさん甘えていた。父と母はもうこの世にいない。育ての親もいない。今となっては、心の底から甘えられるのはレウィシアしかいない。レウィシアはいつでも暖かく包んでくれる、温もりに満ちたお姫様だ。レウィシアの母性に決して偽りはない。レウィシアの匂いは癒しの香りそのもの。レウィシアの温もりは我が子をいたわり、愛で包み込む母の温もりそのもの。まるで愛と母性の女神にも見える。レウィシアの暖かな手がルーチェの頬を撫で、そしてルーチェの頭を包み込むように抱きしめる。ルーチェは尚もレウィシアの胸の中で匂いと温もりを感じていた。
「いい子ね、ルーチェ……ずっと抱きしめてあげる。ずっと、暖めてあげる……」
耳元で囁きかけるレウィシア。ルーチェはレウィシアの胸から離れようとせず、涙を溢れさせる。
ぼくのために、たくさん抱きしめてくれるなんて。
こんなに優しいお姫様が、ずっとぼくを抱きしめてくれる。ずっとぼくを暖めてくれる。
ずっと、お姉ちゃんのそばにいたい。お姉ちゃんに甘えていたい。
ずっと、お姉ちゃんと一緒にいたい。
ぼくにとってのお母さんは、レウィシアお姉ちゃんなんだ。
「お姉ちゃん……お姉ちゃあん……うっ……えうっ……うええぇん……」
ルーチェはレウィシアの胸の中でたくさん泣いた。悲しいから、嬉しいからといった感情ではなく、赤子のように泣きじゃくってもずっと胸の中にいさせてくれる相手がここにいる。だから泣いた。
「ルーチェ……どうしたの? そんなに泣いて」
レウィシアは泣きじゃくるルーチェを抱きしめながらも、たくさん頭を撫でる。まるで赤子をあやすかのように、胸に顔を埋めさせたまま抱きしめ、ずっと撫で続ける。
「泣きたい時は、たくさん泣いてもいいのよ。お姉ちゃんが、たくさん抱きしめてあげる」
ルーチェはずっと泣いていた。赤子に戻ったかのように、ずっとずっと泣いている。
泣き疲れたルーチェは、レウィシアの胸の中で眠りに就く。やがてレウィシアも眠りに就いた。
「……お姉ちゃん……だい……すき……」
ルーチェの寝言に応えるかのように、レウィシアはルーチェを包み込むように抱きしめた。
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