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じゅじゅプラス

[近くのコンビニ]

放課後、スマホの通知を遡っていれば1時間前に届いていたのは、そんな簡潔な文字だった。
「おい、憂太。この後暇か?」
「ごめん、真希さん。〇〇さんから連絡来てた」
「あっそ、じゃあ今日は集まり無しだな。それにしても珍しいな。平日に声かけることなんて滅多になかっただろ」
「うん……何かあったのかな……」
「ま、とりあえず早く行ってやれば?」
「ありがとう、また明日」
そう言って、荷物を持って教室を出た。

学校から徒歩五分のとこにあるコンビニに、見慣れない車の傍で煙草を吸っている彼女を見つけた。
「ごめんなさい、遅くなりました」
「待ってないから気にしないで」
「どうしたんですか、その車」
「レンタカー」
それだけ言って、彼女は煙草を灰皿ケースに押し付けて運転席に乗る。意図がよく分からず、そのまま立っていると、早く乗れと目線で怒られた。
戸惑いながらも助手席に乗り、シートベルトを付ける。
「さて、しゅっぱーつ」
「……運転出来たんですね」
「うん?免許持ってるからね。大学の頃付き合ってた人とよくドライブ行ったよ、もう何処行ったか覚えてないけど」
そう言ってハンドルを握る姿は、普段の子供みたいな言動をする姿と打って変わって、大人の人だった。
「ところで、どこ行くんですか」
「んー、何も考えてない。憂太、行きたいとこある?」
「ええ…………」
「ないなら、空見に行こう」
「はい……?」
言われたことの意味がわからず、困惑の声を上げても彼女はそれに反応せずに、車を自分の思うように進めていた。
都内を出て、二時間。彼女が持ってきた古いCDを聴きながら、他愛もない雑談をしながら辿り着いた場所は、何処かの展望台だった。
近くの駐車場で車を停めて、展望台に登る。時刻は19時半頃、冬の寒空の下で空を見上げた。
「さみぃ」
「自分で連れてきたんじゃないですか」
「思い立ったが吉日ってやつだから、許して」
「……何かあったんですか?」
「んーや、何もない。だからここに来た」
周りの人は夜景に夢中になって下を向いてる中、僕らだけが空を見上げている。
月のない夜、星の明かりだけが空を照らしている。
夜景を綺麗に見せるためか、街頭が少ない。暗がりの中、隣にいる自分より頭1つ分低い彼女の顔を見れば、その表情はあまりにも感情がなかった。
しばらくして、彼女が口を開いた。
「うん、来た意味そんなないな」
「ええ……!?ここまでわざわざ来たのに……」
「そんな日もある。帰ろ、憂太。ご飯奢るから夕飯食べに行こう」
そう言って彼女は、来た道を戻り出した。
「美味しいお店、知ってるんですか」
「や、何も知らん。今から憂太が調べて」
「そこは自分で調べてくださいよ……」
「どうせ、私が調べてもどれも一緒に見えてきてファミレスでいいや、になる」
「もっと食に関心持ってください」
「善処しまーす」

その日の夕飯は、もつ鍋になった。
彼女は飲酒運転になるから、と珍しくお酒を飲まずにオレンジジュースを飲む。
他愛もない話をした。鍋をつつきながら、頭に残らないようなどうでもいい話を。車の中でも沢山話したのに、延々と話すのが少し楽しかった。
「それで?結局今日のドライブの理由はなんですか?」
「旅番組の影響かな」
「それでドライブに留まるとこが多鶴希さんらしいですね」
「突発旅行にしようと思ったけど、流石に馬鹿か、って思ったからね。相手が五条先輩か悠仁ならやってたかも」
「それはそれで複雑です」
「そう?じゃあ、今度は突発旅行開催するか」
「せめて、長期休み中にしてくださいね」
「善処する」
「そこは確約してください」
そんな会話をしつつ、シメのラーメンまで堪能してから、帰路につく。
帰りの車は凄く静かで、ラジオから流れる音楽だけが賑やかだった。
「家の近くまででいい?」
「大丈夫です」
「今日はありがとうね」
「こちらこそ、ありがとうございます。今度は、絶対に旅行行きましょう」
「うん、そうしよう」
おやすみなさい、と言葉を交わしてから、車を降りる。
僕が車から離れたとこを確認してから、彼女はゆっくりと車を走らせて去っていった。

「相変わらず、デートに誘うの下手くそですね」

そんな呟きは、寒空に吐いた白い息と混ざって誰にも聞こえずに消えた。


「え、デートの誘い方と何処行けばいいか?」
「うん」
「それが深夜に電話してきて相談すること?」
「助けてください、GLG五条先輩」
「てか、お前自分からデートの誘いしたことないの?」
「今までの経験上、一回もないですね」
「はー?やば、お前。可愛い彼女からの誘いなら男はみんなイチコロなのに」
「何処ぞのGLGのせいじゃないですかね」
「………………俺に聞くより傑の方が適任だよ!じゃっ」
「逃げた」
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