緩リクエスト募集
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衛宮邸の一室、畳の上でごろりと仰向けになりながら思い切り伸びをすれば間抜けな声が口から漏れ出た。
「こら、食べてすぐ横になると体に悪いだろ」
家主であり同級生である士郎からそうぺしりと額を弾かれて、大袈裟に「いて!」なんて声を上げながら逃げるように体を捻る。
全くもって正しい意見であっても、愚かな人間の前では意味がないのだ。
「お腹いっぱい美味しい士郎の晩御飯食べてさぁ、それで横になっちゃダメなんてそんなの受け入れられないね!」
まるで至極真っ当な事を言っています、なんて顔で言い返すナマエに士郎は苦笑を浮かべる。
大の字に寝転んで満足気にしているナマエを見つめる士郎の目は、もはや同級生というより保護者のそれだ。
自分の手料理を美味しかった、なんて褒められて、お腹いっぱいになって満足している姿を前にしてしまっては、もう許してしまう他なかった。
「俺、もうこのまま此処に住んじゃいたい」
なんの脈略もなくそう言って、ナマエは指折り住みたい理由を数え始める。
「士郎の美味しいご飯が毎日食べられるでしょ、そんでそのまま寝ちゃっても問題ない! それに何より、天気の悪さとかバイトで無理とか関係無くなる!」
どうですか!と何故か自信満々に士郎の足をつつく。
冗談交じりのおかしな提案に、士郎はそうだな、と僅かに考える素振りを見せてから口を開いた。
「まぁ、お前が俺と同じ“衛宮”になるなら、ずっと一緒に住めるな」
同じ?と脳がクエスチョンマークを浮かべれていると、士郎の左手がナマエの左手をすくい上げる。そうして緩く繋がった指先が、すりすりと薬指を撫でていく。
同じ苗字と、左手薬指。
繋がったその2つの意味が分からない程、無知ではないし鈍感でもない。
巫山戯ているのかと見上げた士郎の顔がただの同級生へと向けられる表情とはあまりにも違くて、それが自分に向けられたものだと自覚してしまった途端、急速に顔に熱が集まっていった。
「ん、ははっ、耳まで真っ赤だ」
空いた右手が、今度は耳に触れる。
親指が耳の縁を緩くなぞって、その次の瞬間にはナマエは勢いよく立ち上がっていた。
キャパシティオーバー、限界であった。
「よ、よくない!!!なん、なんか!破廉恥!!!!」
「は、破廉恥!?」
士郎の声を無視して勢いよく部屋を飛び出す。
これ以上あの妙な空気が漂う部屋に2人きりでいる事が耐えきれなかった。
「そ、そういうのは!まだ!早いと思います!!!」
そう言い残してバタバタと廊下を走るナマエ。
まだ早い、というのはその内同じ苗字になる気がある、ということなのか。
けれどそれを聞いたら今度は部屋ではなく家からも出ていきそうなので胸の内に秘めておくことにして、ナマエを落ち着けるためのお茶を入れてやるべく、士郎は立ち上がったのだった。