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びゃぁぁーーん!!という情けない泣き声にカルデアの面々はまたか、となんとも言えない微笑みを浮かべていた。
「え、英雄の証、きゅうじゅっ、ひぐっ!99個しかっ!集められなかったぁ!!うえっ、おれの、おれのプリンアラモードが!!」
びえびえと泣き声をあげているサーヴァントの名前はナマエ。
カルデアに召喚された、歴とした“悪魔”である。
たとえ涙と鼻水で顔面をぐちゃぐちゃにしながら泣いていようが、マスターに手を引かれながら歩いていようが、正真正銘の悪魔である。全くもってそうとは見えないけれど。
「英雄の証100個でプリンアラモードの契約が……」
「う〜ん、またあとちょっとで届かなかったね……でも、99個も集められたのは凄いよ!助かる!」
ぐずぐずと鼻を鳴らすナマエを何とか宥めながら食堂まで連れてくると、厨房に居るエミヤに視線を向ければ彼は承知したといった風に1つ頷いて厨房の奥へと引っ込んで行った。
ナマエは悪魔にまつわる様々な伝説を元に1基の反英雄のサーヴァントである。
悪魔伝説の1つ、「セゴビア水道橋」
その異名は「悪魔の橋」
スペインに実際に存在している地上30mにも及ぶ巨大なその橋には悪魔に関するとある伝説が存在する。
水汲みに困っていたとある美しい娘が、水を運ぶ橋を一晩で建てられれば結婚するという契約を悪魔と結び、喜んだ悪魔は懸命に石を運び橋を建てるが、最後の石を嵌める前に夜明けが来てしまい、悪魔は泣く泣く姿を消してしまう、という話である。
まぁ、つまるところナマエが泣いている理由というは、「悪魔の橋」の伝説も霊基として組み込まれているからなのだ。
「英雄の証を1晩で100個集める事が出来たら、 プリンアラモードを作ってもらえる」というのが今回の契約だった訳なのだが、「悪魔の橋」の伝説の通りナマエは最後の1個を集めることが出来ず、プリンアラモードを口にすることが出来ず泣いている、という訳である。
マスターとしては一晩で英雄の証99個でも大変に有難い事であり、プリンアラモードの1つや2つ謹んでお贈りしたいところなのだが、聖職者系のサーヴァント達から「失敗した悪魔に成功体験はよろしくない」と釘を刺されているのだ。
マルタ曰く、「契約が失敗した悪魔に褒美を上げれば、次の契約でもそれを持ち出してくるはずです。前回は良くて今回はダメなのかと。
そうすればもう契約を持ちかけられた時点で悪魔は失敗成功に関わらず褒美を貰うことになる。今はお菓子や玩具の範囲で収まっていますが、これが「悪魔の橋」伝説通りとなればどうなるか……ここまで言えばマスターも分かりますね?」
マスターの脳内に一瞬にして「契約失敗したけどマシュは花嫁として貰ってくぜー!」なんて可愛い後輩を隣に侍らせながらゲハゲハ笑うナマエの姿を想像して顔を青ざめさせた。失礼な奴だな!なんてこれまた脳内でナマエが抗議の声を上げていたが。ナマエは悪魔なのでこの扱いもやむ無し。
最初の頃は「こちらが何も渡すことなく素材やQPを集めてくれるなんて、なんて素晴らしい悪魔なんだね!どこぞの爆弾魔とは大違いだ」
なんて笑っていたゴルドルフ新所長も失敗に次ぐ失敗に毎度情けなく泣きじゃくるナマエの姿に「あの悪魔に契約を持ちかけるのは止めなさいね」なんて眉を八の字にしながら保護者の顔をしていたし、マスターもそれに深く頷いたのだが。
まぁ、それでもナマエ自身はこうして「今回こそはいける!バカにするなよな!」なんて鼻息荒くマスターに契約を持ちかけては、やっぱり失敗に終わって、やっぱりびえびえと涙を流しているのが現状だった。
そんなナマエの目の前に、厨房から出てきたエミヤがコトリ、と皿を置いた。
「ほら、今日のおやつだ」
ツヤツヤと輝くカラメルと白いホイップクリーム。そしてその上に鎮座する真っ赤なさくらんぼ。
プルリと揺れるそれは、カルデアキッチンく組特性プリンだった。
「プ、プリンだっ……!!」
普通のプリンより豪華ではあるが、ナマエの望んだプリンアラモードではない。
これはマスターとゴルドルフ新所長、そして聖職者系サーヴァント達との協議の結果だった。
悪魔であるナマエに、失敗した契約の報酬を渡すことは出来ない。けれど報酬のためとはいえ素材集めやら色々頑張ってくれたのは事実だし、そんなナマエに何もしない、というのは良心が痛む。
というマスターの訴えの元、聖職者系サーヴァント達のアドバイスにより出したのが、ナマエが望んだものよりもランクを下げた物を契約の報酬とはせずに渡す、というものだった。
そんな話し合いがあったことなんて知らないナマエは「プリンアラモードじゃない……」なんて眉を八の字に下げながら、ほんの少し拗ねたような動作でプリンをゆっくりと口に放り込んだ。
一口、また一口。
ゆっくりとした動作は次第に速く。
八の字に下がっていた眉は元通り。
瞳にまだ薄らと涙の後は残っているものの、先程とは違うキラキラとした顔にマスターもエミヤも柔らかな笑みを浮かべた。
「むぐ、むっ、……プリンアラモードじゃないけど、なかなか……なかなかやるな、カルデアキッチン……」
「ふっ、お褒めに預かり光栄だ」
「良かったね、ナマエ」
悪魔相手とは思えない保護者のような生温かい見守られ方をされている事に気付かずに、ただナマエは夢中になってプリンを頬張るのだった。